御簾の上げ下げから泡のように消え入るまで | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

第一幕では御簾の上げ下げ、第二幕、三幕では柏木を演じさせていただきましたひがしです。

三幕という長丁場、足をお運び下さった皆様にまずは感謝申し上げます。そしてキシャ単独では不可能だった舞台の諸々について手を貸していただいた皆様にも心からの感謝を。


十周年ということで再演することとなった『源氏物語』ですが、私のキシャ参加はこの『源氏物語』の卒業公演からでした。

大学祭で上演したものが好評を博し、急きょ2月に卒業公演をすることとなったわけですが、スケジュールの都合がつかずキャストが足りないという事態が発生→同じゼミの人に声を掛けよう、ということで公演一ヶ月前のゼミ旅行(というか遠足)にてお声が掛かったのが私でありました。

公演一ヶ月前に声掛ける方も掛ける方ですが、あまり悩まずに承諾しちゃう方もしちゃう方という双方なかなかのギャンブラーぶりを発揮したことで出ることになった公演から早六年、まさか未だに続けていて再演まですることになるとは…。いや全く、人生というのは分からないものですね。

それはそれとして、今回の柏木について。

以前は小侍従との愛人関係というか共謀関係が強調されていた柏木だった(と思う)のですが、今回は会いたい!気持ちを伝えたい!「あはれ」って言ってほしい!と思ってなりふり構わず突っ走った結果がコレ(=密通)だよ!というわりと青臭い方向性になった気がします。

これは小侍従役が変わったことによる関係性の変化ももちろんありますが、光源氏と藤壺宮との密通とは違う、綿密な計画性のない、偶然が積み重なった結果生じた産物という感じになるといいなぁと思ったからというのもあります。

それと感情の赴くままに行動する「若さ」というものを、「老いた」光源氏に見せつけるという形にもなるかなぁという思いもチラッとありました。まぁ見せつけた結果睨み殺されるんですけれど。


ともあれ、泡の消え入るように亡くなってしまう結果にはなったものの、今回の柏木は結構演じていて楽しかったです。夕霧とは光源氏に対する文句までぶちまけちゃうくらい腹蔵なく思ったことを言える間柄だし、何だかんだと手を貸してくれる小侍従もいるし、光源氏も何かと目をかけてくれるしと、女三宮にあそこまで執着しなければ…!と思わずにはいられない充実した環境でありました。でも執着しちゃうんですよね、垣間見恐るべし。


柏木としては盲目的に女三宮一直線で突っ走ったわけですが、舞台袖で待機中に「あなたがまるで子供みたいにうかつにお姿を見られたものだから!」とか「どなたのためにも悪しきこと」と小侍従が女三宮を詰っている場面を見ていて、「あぁ、柏木は小侍従に愛されてるんだなぁ」という実感をヒシヒシと感じまして、「今からでも遅くないぞ柏木!」なんて思ったりしてました。いやもう遅いだろってタイミングなんですけど。

一年以上前から準備をしていた十周年もあっという間に過ぎ、また次の公演に向けて走り出さねばなりません。

次回は『伊勢物語』の以前のお話、劇団内では「エピソード・ゼロ」と呼ばれたりもしていましたが、久しぶりの赤い人の登場です!

『源氏物語』は知ってるけど『伊勢物語』とかあんまり知らないんだよな~という人にも楽しめる、詳しく知っている人には「そうそう、それそれ!」という感じで深く楽しんでいただける「いつものキシャ」をお見せできるよう、団員一同これからも頑張って参ります。

どうぞ末永いご愛顧をお願い申し上げます!