藤氏のお姫様から藤氏の女へ | 劇団 貴社の記者は汽車で帰社

 6月16日は池袋に御来場いただきまして、誠にありがとうございました。

 当日はあいにくのお天気で足元も悪い中、多くの方にお越しいただき、大変嬉しかったです。いらしてくださった方々にとって、少しでも楽しい時間となったのなら、幸いです。



 さて、今回は「女」という、匿名の女性を演じさせていただきました。にったです。

 まあ、匿名と言ってもタイトルをご覧いただければ、名前はわれるんですけれど(笑)

 今回、他のどの役よりも、「女」は自由にわがままに公演を楽しませていただいたと思います。

 自由にわがままに物語を求め過ぎて、古傷を自分でえぐっちゃいはしましたが(笑)


 けれど、古傷をえぐってしまって、最終的に落ち着くところに落ち着いた時、演じ手として「ああ、「女」は大人になったんだなぁ」と感じました。これが今公演中、役を通じて感じたものの中で一番印象に残った感覚です。


 今回の「女」としてではありませんでしたけれど、過去、別の公演で同一人物を演じさせていただいていた時は、彼女は、「世間知らずなお姫様」だったんですが、今公演では世間知らずなお姫様から「ちょっと大人の女性」になったなぁ、と感じたのです。


 個人的に、「私が好きなら攫って逃げて。(そして幸せにして)」って相手に望むことは、実にお姫様的願望だなぁ、と思うのです。

 このお願いって、一途で可愛い感じもしますが、同時に高慢でわがままなお願でもあるなぁ、と。その可愛いけど高慢ってあたりが、実にお姫様的(笑)

 前までは、この高慢で可愛いところで「女」は終わっていた気がしたんですけれど、今回は「人一人の運命なんてこの手に抱くには重すぎた」という「男」の台詞が、すとん、と落ちていったといいますか。

「女」として、「確かに人一人の運命を実際に背負うのは無理だわ。分かる分かる」みたいな世間を知った大人の理解が、「男」の台詞を聞いた前後で生まれたんです。

 だからもう、「女」は「男」に攫って逃げてとも言わなくなるだろうし、なんで手を離したの、とも問わなくなるだろうと。世知辛さとか世の中のままならなさを理解して、「男」と恋人としてではなく付き合っていくんだろうと――ラストでいちゃいちゃしながら(笑)感じた次第なのです。


 一途で真っ直ぐな過去のお姫様的な恋の仕方じゃなく、ちょっとひねくれた大人の愛し方が出来るように「女」はなったんだと思ったこと。これが「女」を演じていて、とても感慨深かったです。

 それが伝わるように演じきれていたかは、分かりませんが…(汗) ただ、「女」を見て、楽しそうだなぁでも、我儘だなぁでも、何かを感じていただけたなら、嬉しく思います。




 役柄を離れて今公演を振り返ると、毎度のことながら各所にご迷惑をおかけしているのですが、今回は追い込みの時期にあまり稽古に参加できず、一番ダンスに不安が残る私が、一番ダンスを練習出来ていないなどという事態を生じさせ、皆々様の胃に御負担をかけただろうことを申し訳なく思う次第です。
 スタッフ作業もほとんど出来ずに、本当に今回は「女」よろしく楽しく自由にわがままに、皆様のおかげで舞台に立たせていただきました。

 衣装、小道具、舞台美術、照明、音響、会場整理等事務担当の各スタッフさま、取りまとめくださった演出さん、舞台監督さん、共演のキャストの方々に厚くお礼申しあげます。


 また、再びになりますが、なによりも今公演を見に来てくださった皆様に、重ね重ね深く感謝いたします。ありがとうございました!!