瀬戸線は赤電全滅秒読みへ(2)清水武氏の講演 | 鉄道きさらんど

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15日に、金山駅前の名古屋都市センターで行われた鉄道友の会名古屋支部主催の講演会「名鉄・瀬戸線の近代化(瀬戸線の思い出)」を聴いてきた。講師はRMライブラリーから『名鉄瀬戸線 -お堀電車廃止からの日々-』を出している名鉄OB・貨物鉄道博物館長・友の会名古屋支部名誉顧問の清水武氏で、昇圧前のお堀電車時代から近年までの瀬戸線の様々な話や、他社の話も織り交ぜての中身の濃い内容だった。

その中でびっくりして笑っちゃったのが清水氏の口から「2ch」という単語が出てきたこと!やっぱりネットでファンの反応を調べているんだなと。瀬戸線の車両の画一化に触れ「瀬戸線4000系は2chで評判が悪い。しかしステンレスの汎用車両に統一したほうが効率的なので、今後も通勤電車ではどこの事業者でもこういう傾向が続くだろう」「かつての愛電はHL車で統一していた。」と。逆に昔の名鉄は複数の会社を糾合してできた路線網を持つだけあって釣りかけなど種々雑多な車両を走らせていただけあり、車両保守の技術力は一流だったとも言っておられた。とくにAL社のブレーキ弁が特殊でブレーキ機器の保守は難しかったようだ。

また、6600系が冷房をもっていなかったことにも絡めて名鉄の冷房化率にも触れ、本線では徳没料金なしで乗車券だけで乗れる5000系をリリースするなどこの点でかつての名鉄はさきがけていたが、のち冷房化率が下がり運輸省から指導を受け、そこで3900系の廃車発生品の台車や床下機器を流用して6750系を造ったという。

また線路など地上設備の話も。旧線は単線なので一閉塞区間に3個以上の列車を走らせないなどは当然として安全に特に気を使っていたとか、新線区間は最初大曽根以東とつながってないため栄町しか上下線のポイントがなく片方しか電車が運転できない中でも国の指導で試運転をし、それが『名鉄ニュース』や各種媒体で報じられた深夜の試運転とのこと。そして、営業運転時は当面運転士に添乗者をを必ず付けることを名鉄が運輸省に約束したという。それだけ昔の運輸行政は厳格で、なぜ近年福知山線事故が起こってしまったのか未だわからないとも清水氏は語っておられた。逆に昔のほうが鷹揚な点もあって大森事故で転覆した電車は直して使い続けたとも。

線路で言えば、RMライブラリーでも書かれていたが600Vから1500Vに切り替えるときは車両をそっくり変えたが貨物用のヤードが残っていたことが新旧の車両を一緒に留置できたことを挙げ、昔は貨物用にあらゆる国鉄・私鉄路線が連絡線でつながっていたり、ヤードがあったことが便利だったが今はJR各社の都合でどんどん撤去され不都合が生じているということも指摘されていた。そして、600V時代は最後まで小浜線方面へのトキ仕様の貨物列車があったが、これを昇圧で廃止する際は瀬戸の窯業関係者へ説得周りをし、その代替施設として作ったのが新守山ヤードだという。

最近昇圧した鉄道と言えば和歌山電鉄貴志川線だが、あれは車両や線路は変えず電気装備や変電所などを交換するだけだったことに比べると瀬戸線昇圧の時は大々的なドラマが繰り広げられていたんだと改めて思った。

また、清水氏は三岐鉄道、大井川鐡道のこと、JR北海道にも触れ三岐は社長の方針で板を張り替えて直しやすい木造貨車を好んで使っていたこと、もともと鉄が腐食しやすい上に動力近代化を経て現代では給水給炭の設備や運転・修理の人員を確保しづらくSL動態保存をする名古屋市などの自治体は慎重に再考すべきこと(SL動態保存の難しさは友の会なら須田寛会長もことあるごとに講演で仰っている)、壊れれば交換すればいい車両と違ってその場で保守作業しなくてはいけない線路保守はさらに難しく、JR北海道のトラブルはあれだけの長大路線をあれだけの規模の会社が切り盛りする分割の枠組み自体に問題があるのではということなどを述べられていた。

とてもすばらしい講演で、やっぱりネットだけでなくて本を読んだ方がいいし、できれば著者の生の講演を聞くとさらに鉄道への理解が深まると実感した。