これからの地方都市のJR線の話:都市間より都市圏輸送に伸びしろがある | 鉄道きさらんど

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いつも列車・バスなど公共交通の事ばっか考えてます。

今年の鉄道ピクトリアル8月号をぱらぱら読んでて驚いたが、姫新線は2年間の増便社会実験を終えて、去年・2012年度は対前年度・2011年度比6.6万人増加したとのこと。姫新線と言えば、昔を懐かしむ鉄道マニアにとっては中国ハイウェイバスと智頭急行が開業してから津山・鳥取への客をごっそり失った生ける屍のような路線に見えるが、近年の地元自治体の輸送改善事業 などを行ってから岡山県側は変化がないとしても姫路-上月間は姫路都市近郊の通勤通学路線としてよみがえった。JR西日本の地方交通線と言えばとかく悲壮感いっぱい、廃止と紙一重のところでギリギリ首の皮1枚で生きながらえている路線ばかりのイメージがあるが、自治体の活性化へのテコ入れ次第で都市近郊については伸びしろはあるのである。(似たような事例としては、高山本線富山口もあるだろう)


鉄道ジャーナルの最新の9月号では土佐くろしお鉄道が取り上げられているが、高規格で岡山から直通特急が走る中村宿毛線と、室戸岬経由での徳島県側への延伸の目が完全に消えた高知近郊の地域輸送に完全に特化したごめんなはり線を比べると、2路線互いの特質の違いからくる人件費や車両や線路維持費の違いの違いはあるとはいえ、年間でも赤字額は中村宿毛線のほうがごめんなはり線よりはるかに大きい。これにも驚いた。ごめんなはり線は赤字でも自治体が支えられる程度なので実際に沿線が土佐くろしお鉄道の固定資産税を積み立てていて支援のたしにしていて、しかも優等列車しか走らないのに中村宿毛線より利用者も多く、通勤定期での利用の比率も高いとのことである。


10年前なら中村宿毛線よりごめんなはり線のほうが特急が走らない線区なので将来が絶望視されていた気がしたが、ごめんなはり線開業からまる10年以上たつと結果は逆なのだった。


こういうケースはJR線にもあって、白新線は特急の利用が減っても新潟近郊の地域輸送は堅調だし、札沼線は末端区間はひどいものだが、札幌近郊の輸送はJR発足後に急増し電化したし、可部線は非電化区間は浜田へつながらず、廃止の憂き目にあったが民鉄時代からある電化区間は広島近郊の開発が進んで利用者が増えているし(元日の中国新聞より)、可部以北も住宅地化が進んだからさらに「復活」(電化延伸)が決まったのである。高速道路が伸びて、高速バスが当たり前に全国を走りETCやナビのおかげで車でのロングドライブがかんたんな今は都市部の新快速や新幹線ではない在来線の都市間特急は料金がとれるので儲けやすいが、なかなか厳しいのである。逆に地方都市でも高速道路とのアクセス道路や中心市街地は渋滞するし、一定以上の速度と頻度と輸送力で運行すれば固定客がついてくるのである。結局、少子高齢化だ不況だクルマ社会化だと理由を並べ立てても、道路や空路に転移できない需要は残るかがんばれば増やせるし、中心市街地活性化に国が前向きな時代でもあるのでので、東京と大阪でなくても、数十万人規模の地方都市でも鉄道線をさらに活性化可能だ。また、特急は大都市の通勤路線や新幹線と違って減価償却しきった地方路線を通る列車は、料金値下げを検討すべきだと思う。全車自由席の列車を増やし定期券や回数券で気軽に利用できればラッシュアワーの都市中心部への短距離の定時・高速・大量輸送はこれまた道路交通への転移がしにくいので最後まで鉄道需要が根強く残るどころか、新規顧客拡大も可能だと思う。