ー父と息子と、居酒屋天狗ー
ダイニングテーブルが、居酒屋、天狗になっています。
父がスマートフォンの画面を熱心に見ている。
斜め掛けのバッグを掛けた凌。
扉を開けて父の存在確認すると、物凄く嬉しそうな表情を見せる凌。
ニコッと笑いながら。
凌:「おまたせ。何見てるの?」
父:「おお!今な、あんちゃんの動画見てた。でも全然聞こえないんだよ。」
凌:「そりゃそうだよ。こんな騒がしいところじゃ」
父:「でもボリューム最大だぜ?」
凌:「大丈夫?通信料。」
父:「通信料?」
凌:「ちゃんとパケホーダイにしてる?」
父:「パケホーダイ?!」
凌:「データープランとか」
父:「データープラン??」
凌:「なーんもわかってないんだね。」
クスッと笑う凌。゚(゚´Д`゚)゚。
この時の凌ちゃんの表情がなんとも穏やかで。
何も知らない父を仕方ねーなって顔で見てて。
父と息子だけの、父と息子にしか作れない時間が流れてた。
父:「そりゃわかんねーな。いつも携帯屋の店員に任せてるから」
凌:「動画とか見てると結構かかるよ。パケホーダイにしておかないと。」
まだ見ている父。
凌:「とりあえず、切れば?」
父:「あともうちょっとだ。ビールでいいか?」
頷く凌。
ビールをコップに注ぐ父。(画面を見ながら)
それを嬉しそうに見つめる息子。
乾杯しようと、待機する凌。
が、しかし。父は動画に夢中でグラスを傾け乾杯を期待する凌をスルー。
。゚(゚´Д`゚)゚。
でも凌は父を見てまたクスッと笑って、ビールを飲む。
すごく、大切に、味わって。
とっても美味しそうに。
凌:「この間さ、24年ぶりって言ったけど本当は22年ぶりだもんね。」
凌:「俺たちはさ。」
ここ、特別な言い方がして、胸がキュッとなる。
少し溜めながら言ってた。
父:「そうだったっけか?」
凌:「え?!覚えてないの・・・?」
父:「いや、覚えてるよ?」
凌:「先生と行ったじゃん?父さんの職場に!」
父:「あー。そんなこともあったな。」
凌の表情が一気に曇る。
完全に覚えていない様子の父。
父:「じゃあ、22年ぶりの再会に乾杯だ、乾杯!」
一方的に乾杯をされその場をやり過ごした父。
グラスを持ったまま固まる凌。
父:「お、エンドロールだ・・・」
22年前のことを忘れていた父。
ものすごく、悲しくて、絶望の表情。
このシーンの凌の顔が、今でも頭から離れません。゚(゚´Д`゚)゚。
次は、
凌が主役の劇「おでんはじめて物語」の練習のシーン。