ービデオマックスでの凌と国夫ー
暗転。
暗闇の中急いでエプロンを付け、VANSの白のスリッポンを履く。ちなみにエプロンの腰リボンはマジックテープ。
カランカラン〜♪
ドアの音が鳴る。
凌:「いらっしゃいませー!!」
駆け足で店のドアまで向かうと父が立っている。
(走りながら袖をまくってた)
凌:「何だよ。来るとき連絡してっ言ったじゃん、いつも急だな。」
父:「まあいいじゃねぇか。あんちゃんいるんだし。」
凌:「あんちゃんって…」
あんちゃんと呼ばれ少し戸惑う凌。
父はビデオテープが入った紙袋を手にしていて、「結構あるね」と言いながら、凌は紙袋を受け取る。
どこに何が残ってるのか分からないと言う父。
凌: 「ラベリングしておこうか?1本100円だけど。」
父:「え、100円っ!?」
凌「まぁそのくらいはサービスしておくよ」
注:現在、リビングがビデオマックスになってます。
ソファーに座る父。
スツールに座る凌。
(座り方が大股開きで男臭さが出ちゃってる。そして床に置いた袋からテープを数える姿が何とも男前アングルでした…♡)
テープの数を数える凌だが、何故か乱暴にテーブルに置く!(笑)
父も「なんだ、男らしいってか?」とツッコミ(笑)
凌:「24本ね。1本につき600円だから14400円になります。」
「前金にしとく?後払いでもいいけど。」
「古いテープだとカビが生えてる可能性があるからその際は1本3000円とるからそれさえ了承してくれれば。」
父:「何だよ、金とるのか?」
凌:「取るよ普通に!」
父:「映ってるのお前達だぞ!」
凌:「撮ったのそっちだし!」
父:「それはそうだが…」
凌:「それとこれとは話別でしょ!」
24年ぶりの老いた父と大人になった息子のやりとり(笑)
凌:「後払いね。ここに住所と電話番号書いて」
仕事は楽か?と父は聞く。
凌:「まあそうね。楽っちゃ楽だけど。」
ハローワークからの紹介で収入も少なく身体張った仕事ばかりな父は、凌にバイトを募集してないかを聞く。
凌:「仕事してるって言ったじゃん。でもこの仕事も先細りだよ。いずれこの世からビデオは消えて無くなるってわけで。」
父:「まあその頃には俺も・・…っっっ…」
急にズキンと傷んだのか頭のこめかみを押さえ、痛がる父…。
凌は父の異変に気づくが、触れられず。
これからどうするんだと聞かれ…
凌:「どうするんだろうね。それ姉ちゃん達にも散々言われてるよ。いつまでバイトなの?!いつまでこの家に住んでんの?!いつまでスネかじってるのってさ…。」
父:「俺もあの後そう言われてたんだろうな。」
凌:「そう思う?怒り沈めるのほんとまーじ大変だったんだから。」
と、ちょっとイタズラっぽく言う凌。
と。ここからあの雨の再会の日、父が帰った後の回想シーンが展開される。
ー雨の日の再会の回想ー
姉たちは怒りで溢れ強い口調で感情をぶつける。
何故急に現れたのか?
なぜ母はわざわざ父を送りにいったのか?
家の車で送ったのか?
凌は姉たちの怒りを鎮めようとするが、言い合いになっていく。
冴:「お母さん、あの人を許したわけじゃないわよね?!」
冴:「まさか再婚するとかないわよね!?」
凌:「別にいいじゃん。」
凌の返答に更に怒りをぶつける姉。
凌:「母さんが幸せだったらそれでいいと思うけど!?」
冴「借金と女を作り簡単に家族を捨てた男よ!」
凌:「簡単かどうかわかんないだろ?
じゃ聞くけど姉ちゃん快のこと簡単に捨てられる?」
冴:「捨てられるわけ無いじゃない!」
凌:「だろ?!簡単に子供を捨てられる親なんていないよ!」
准:「でも捨てたのは間違いない。それが全てよ」
凌:「何か理由があったかもしれないだろ?大人になったら色々分かるだろ、浮気とか不倫とか!!」
わかったような口を聞くなとより怒りが増す姉たち。
その頃、母が帰宅する。
詰め寄る姉。
いつからあの人と連絡取るようになったのかを聞く。
母:「あの人だなんて言わないで。あなた達のお父さんなのよ。」
女3人でどんどん進んでいく会話。
凌:「俺は完全に忘れられた存在になってた…」
女家族の中のあるある(笑)
取り残される男の子…
准が大学受験の頃、働いていたスナックに来てお金を返しに来たと。スナックなんてやめろーって。その頃に携帯番号を交換したと。
凌:「快が生まれてからだ!」
母:「あら、凌ちゃんいたの?」
凌:「ずっといたよ??」
母:「ただいま♡」
凌:「おかえり…」
母も凌の存在を忘れてる(笑)
でも、息子が可愛くて仕方ない母。
そういうものですよね♡きっと。
母:「もうね、昔のことはいいのよ。この歳になったらどうでもよくなっちゃったのよ。」
父をかばう母は呑気にお茶をすする(笑)
母:「またね、みんなでたまに会って食事したり、また家族でなんてことない話が出来たらいいなぁって思ってる」
凌:「って、言ってたよ」
と、父に言う。
母は雨に打たれたからお風呂に入りたいと言い、部屋を出る。
冴は快が泣き始めたので、リビングを出る。
准はタバコを吸おうとする。
凌:「今日禁煙だよ!快いるし!」
准:「じゃあ灰皿置いとくんじゃねーーよ!」
と言いながらドアをおもいっきり閉める(笑)
めっちゃ怖っ!(笑)
リビングに残されたのは凌だけ。
ここで回想シーンが終わる。
ービデオマックスー
姉たちは、
「謝ってほしい。話はそこから。」
「謝ったところで許すつもりなんてない」
と。
土下座でもするか、と父。
凌:「そういう問題じゃないと思うけど。」
わかってる、許してもらえるとは思ってないと。
でも、会えて良かった、と言いビデオマックスを後にする父。
凌:「待って!」
引き出しからDVDを取り出し、父に渡す凌。
(DVDのタイトルは、Street Life)
凌:「それ、見てくれない?俺が撮った映画なんだけど。」
父:「あんちゃんが!?すごいじゃないか。」
凌:「まぁ、自主だけどね。映画監督目指してて。」
父:「瑛子は何も言ってなかったぞ」
凌:「母さんには言ってないからね」
父:「お姉ちゃん達には?」
凌:「言えるわけないじゃん。言ったところで早くやめろって言われるのが関の山だし。」
父に、自分のことを話し始める凌。
凌「小さな町の映画祭のコンペにノミネートされたんだけど、大賞取れなかったら辞めようと思ってる」
「誰にも言わずフェードアウトしようと思ってる。もう30だしずっと母さんに迷惑かけて来たから。ちゃんと就職しようかなって。」
父:「もし取れたら?」
凌:「報告はするかな?母さんにだけは。」
少し微笑みながら。
父「あんちゃん、こっちはいける口か?」
(お酒くいっとする仕草をしながら。)
凌:「まぁ。強くはないけど。」
父:「じゃあ、今度瑛子と3人で一杯やろう」
凌:「うん、わかった」
ここのやりとり、すごく好きでした。
父から飲もうと誘われた時の凌の表情が本当にリアルで。
嬉しさを隠しながらも、隠しきれていない微妙な表情をうまく表現していました。
父:「じゃあな。」
店を出ようとする父を見つめる凌。
凌:「今日は?!」
父:「今日?」
凌:「うん、もうすぐバイト終わりだし、もしそっちの都合が良ければ。」
父:「いや、今度でいいよ。」
凌:「すぐそこに天狗っていう居酒屋あるから。そこで待ってて」
父:「えっ…」
凌:「待ってて。」
エプロンを外しながら休憩室?(正確には子供部屋)の方へ小走りする凌。
父:「て、て、天狗?!」
2人きりの、父との時間。
誰にも伝えていなかった自分の夢を初めて父に話し、父から一杯やろうと誘われて、さぞかし嬉しかったであろう凌。
やっぱり凌は、父をどこかでずっと求めていたんだ…と感じる、胸がジーンとするシーンです。
次は、小学校の職員室での凌と芹沢先生。