〇〇道とは 死ぬことと見つけたり!

常にそんな覚悟で ジェットコースターな人生を

誰もがそんな劇薬を望んじゃない 熱狂よりも大事なものがある

生きてこそ成し遂げられる 生まれてきた意義を果たしに行こう

 

松岡圭祐さんの 【新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅸ

 

「想像上の産物であっても、ソレを産んだのが作者であるのなら、その命には責任を持たないと」

「おいおいおい! 本気で言ってるのかね。血の通う赤ちゃんが実際にいるのとは本質的に違う。なのにどうしてそんな理屈になる?」

「読者にとっては実在の人間と同じだからです」

「そんな真剣に読んでる読者はまれだよ。そもそも活字を読める人間自体が少ないからな。小説の内容に現実感を覚えるほど、のめりこめる連中はもっと少ない」

「いま連中と言いましたよね? 馬鹿にしてるんじゃないですか」

「杉浦さん」――ー「そんな大げさな」

「小説を楽しめるのは才能です。活字の描写を自然に事実として受け止めれる人たちが、宗武さんの書きかけた結末にも素直に涙して、口コミを広めてくれるでしょう。世間の評判に胡坐をかいているとみを滅ぼしますよ」

 

今向き合っている宗武なる人物はいわば尊大なショーマンで、自己肯定感の塊といえる。自らの行いを絶対に正しいと信じ、反省の念などかけらもを持たない。出版事業に関しても根本的に勘違いしている。しかもその勘違いが多大な利益を生んでいるのだから始末が悪い。

 

「なるわけありません! 本気でそう思っているのなら、あなたとはこれまでです。妻子を泣かせて平気でいる人なんて、出版界に身を置くべきじゃないんです。いえ、社会のどこにも存在しちゃならない。あなたが生きているとわかったら、世間はきっと京極夏彦さんの小説のタイトルを口にするんでしょう」

「……ど、『どすこい』じゃないよな?」

「『死ねばいいのに』です! あなたは活字に書かれていることを全く想像しない。だからいつも人にショックを与えるほどの悲惨な話を出版にできる。だけで今は、この瞬間だけは文章表現を受け入れてください。志津恵さんも鞠及さんも、“目を真っ赤に泣きはらし、大粒の涙をとめどなく滴らせて”いたんですよ! 何も感じないのなら、あなたは人ですらない!」

 

「生きているからこそ、あなたの物語は続くんです」

「きみは……、人の死にも多く直面してきな」

寒々とした漁港、規制線と大勢の鑑識課員、あの殺伐とした風景が一瞬だけ目に浮かんだ。悲哀が胸を鋭くよぎる。李奈の感情の奥底から声を絞り出した。「私は現実に生きる人間ですから……、多くの別れを経験して、より重く感じ量になったんです。小説とは登場人物に命を吹き込み、読者と共有するものだと」

「登場人物……か」宗武は自然と目を閉じた。「君も私もある意味、現世に生を受けた登場人物なのだろうな」

 

 

 

子供のおままごとは きたるべき育児への予行演習――ー

今はおままごと自体やらなくなってきたので あまり聞くこともなくなってしまったけど

たしかに一理ある仮説

演じること・想像すること・共感しあうことで 現実問題に備えることができる

だからこそ 誰にでも訪れる「死」という最大にして最後のイベントは注目せざるを得ない

ただ一度限りでセカンドチャンスもない 虚構から少しでもその時をくみ取りたいと願ってしまう

ソレを商売チャンスと見てしまった セールスポイントだと勘違いしてしまった

生真面目さは肩が凝ったり偽善だと煙たがられるけど 結局のところそうする以外にどうしようもないことでもある

ただ利用するのならしっぺ返しがある 無神経で無遠慮でいなくてはならないから対応できなくなる

 

虚構の中であってもうまい話はない 徳川埋蔵金が眠っているわけでもない

カネに変えてはらない・日の目に晒しちゃならない物語は 存在するらしい

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