題名と表紙絵につられて 買ってしまった……

 

メソポ・たみあさんの 【刻をかける怪獣

 

バッチリ題名から連想できるように 

突然与えられたタイムリープ能力を駆使して 絶望の過去/未来を回避するSF物語

よく研がれたのが分かるテンポの良い造りだったけど ソレが薄味だと言う人もチラホラ

確かにオリジナルであろう古典・名作に比べると 優等生過ぎる淡白さが見えてしまう

でもシリーズの一番槍だとしたら 読みやすい・入り込みやすい導入部に化ける

これからどう料理するか 作家性を見せられるか・読者に受け入れられるかが肝になる

 

……とは次回作を期待してみたけど 一年以上経っても次巻は出てない模様

下手に続きを書くよりコレでおしまいの方が 読者としては潔い良いし作り手側も安心ではありそう

でもやっぱり期待してしまう この完璧な結末の続きがあるのかが

もちろん彼らの生活は続くし 戦いの最前線では心休まる日々こそ少ないはず

でも……この熱量に匹敵あるいは超える終末の日は どこにある?

命以上に魂すら賭けて超えたいと切望することは 彼女の死以外に何がある?

「死」の次には何もない この世の中にこの世から消える以上の苦しみは無い

なら……こだわり続けるしかない

 

彼女を助け切った わけじゃなかった―――

初巻のハッピーエンドを全否定する

約1万5千回に及ぶ失敗 その中のたった1つの成功例

成功した自分は幸せだけど それ以外の1万5千の自分はどうなるのか?

その変更によって 最悪の運命をおっカブされてしまった被害者たちもいる

彼らは当然復讐してくる その全部を振り払う力があるのか そもそも正しいことなのか?

自分が得た幸福は 支払った・おっかぶせた代償にみあうものだったのか?

これもかなり使い古されたテーマだけど タイムリープものには絶対についてくるはずの取立て

どうしても誰かが傷つく 自分一人では尻拭いもできない無力感……

割り切って切り捨ててしまうのは その絶大な力に対する責任逃れだし思考停止でもある

ソレで終わりたく無いのならば やる事は一つしかない

 

怪獣として彼女を喰らう―――

ギリシャ神話の時の絶対神クロノスが 逃れえぬ死から逃れるために子供達を食らったように

彼女を喰らい我が身の一つとすれば 彼女は助けられるし被害も最小限に収められる

彼女を助けたいのに喰らうなんて本末転倒では? とは言われてしまうけど

少年が助けたかったのは 本当に「彼女」だったのか?

彼女の肉体だったのか・思考パターンだったのか 全き他人である彼女の魂だったのか?

どの段階だったのかで話が変わってくる 肉体だけだったら間違いなく喰らった方が良い

思考パターンなら専用のAIを作ればよい 魂ならばその生き様・死の運命を見届けるしかない

「助けたい!」と願って怪獣になった以上 求めたのは魂ではなかった

なら喰うしかない 誰かに喰われる前に自分が余すところなく全てを……

 

怪獣となったのなら 人間性は捨てねばならない

捨てきれなければ殺されるだけ すでに力も報酬も受け取ってしまった

自分がしたことはただ 欲望と恐怖でまわる悪魔の取引でしかなかった……

ソレをさらに一転させることができたのなら とてつもない神作になれそう

 

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