復讐は終わった 姉妹たちも無事

お金も問題ない どんな環境だろうとあの地獄よりマシ

後は生きるだけ なのに…この虚しさは何だろう?

研ぎ澄まされたナイフは 鑢にならねばならなかった

 

松岡圭祐さんの 【JKⅢ

 

―――無人の店舗からスマートキーを盗み、ボタンを押すと、ハザードが光ったエルグランドを盗んだ。あの中古車店の前だけ、不自然に並木が消えていた。除草剤を無許可で巻く中古車ディーラーだった。商品を一台失うぐらいのペナルティはあってかまわない。

 

血に染まったガーゼを引き剥がし、ざらついた角材が擦りつけられる。紗奈は仰向けに倒れ、歯軋りとともに痛みに耐えた。笑い声を上げる三人の男の向こうで、こちらを見下ろすミヅキが目にとまった。ミヅキは戦々恐々としていたものの、男たちが紗奈を圧倒するのを見て、安堵の微笑を浮かべた。

紗奈の憤怒は頂点に達した。千鶴の視界に最後に映ったのも、この愚劣な光景に違いない。

 

いまどきの日本でもすき放題生きられる。自分がその体現者だと、強く感じるようになった。強盗から殺しまで、何のためらいもなく実行できるようになったものの、よその暴力団とのいざこざは極力避けた。親父に迷惑がかかる。死なせるのは決して火の粉が飛んでくることのない、警察も捜査に本腰をいれない弱者のみだ。そのルールさえ守っていれば、どんな身勝手な暮らしだろうと維持できる。特に川崎署の管轄内なら、警察ざたになりかけても釜泉が助けてくれる。誰にも遠慮はいらない。どうせ命あるうちが華だ。

 

想像を絶する苦痛の中でも意識かろうじて保ち続けている。とはいえ全身が麻痺状態に陥りつつあった。感覚の喪失が足ばかりか腕にまで広がりだした。手間で動かなくなれば、もう死んだも同然だった。

だが絶望には程遠い。どんな場合にも執念の炎が燃え滾り、決して消えることはない。ジョアキム・カランプーの法則を思い出すまでもない。心の死こそ肉体の死だ。

 

「ゴミは――」紗奈はつぶやいた。「――土に還ってよ」

 

 

 

お天道様に背くことばっかりしてるから、体が弱っちまってるんだよ―――

河神】ていう中華近代ミステリードラマ内で 主人公が裏社会のならず者達を懲らしめた時にぶつけたセリフ

確かに体だけでなく精神の健康にも 太陽の光は無ければ困る

でも腕っ節の強さなど武術・格闘技などは ジムやストリートファイトで鍛えれて太陽はあまり必要じゃないと思ってた

今作や松岡さんの他シリーズでも おそらく他の作家さんでも同じ扱いだと思われる

でも改めて考えてみると 本当にほぼ無関係な要素とは思えなくなってきた

まず精神面であっては有名な 「天」や「天道」に背く行いをし続ければ必ず天罰が下るもの

よく知られている人体の科学知識としても 太陽の光を浴びることで精製できる重要栄養源がある

どんな武術においても 必ずといっていいほど「心技体」の三位一体を提唱している

ただの努力目標や夢想家の戯言ではなく どれだけ体を鍛えようが・技を極めようが心が整っていなければ一流にはなれないと

それでも世の中には「実戦武術」や殺人術なんて心を無視したモノがあるけど ソレは人外の・修羅の道でもある

得られる強さは強大で時に勝利をもたらしてくれるけど 必ず悲惨で惨めな末路を辿る

歴史や物語でも散々教えてくれてきたことだけど 現実を見渡してみるとどうもその実感が沸いてこない

天罰なんて下ることなく 悪党たちは世の中にのさばり虐げ続けている……

どうしてこんなおかしなことが起きているのか?

言い伝えは嘘だったのか?

太陽はただの巨大な蛍光灯でしかなかったのか?

作家さんたちは「その通り!」と描いている でもそう割り切るにはあまりにも身近で必要すぎる

だから思う 本当の現実では悪党たちは虚弱なんじゃないのか?

二十歳前後の肉体成長のピークまでは確かに どんな人間だろうと強健でいられるのかもしれない

でもそれからは独り立ちを求められる 真の親元たる地球からの生命力の援助が途切れる

悪業に邁進し天道に背けば いつも観察している太陽からの供給は見込めない・猛毒コロナを送り込まれる危険もある

他の人間から奪うしかない 捧げさせる仕組みを構築し維持し続けなければならない

でもそもそも力の差はない・むしろ自分の方が脆弱なまである どうやって奪えるのか……

盗む・騙す・殺すしかない 含まれる怒りや恨みを払わねばならない・吸収しきれない殺し続けるしかない

被害が増えれば知れ渡る どんどんやりづらくなっていく……

強靭な肉体・武術を極めた武闘派悪党なんて存在 本当に現実に生存しているのか?

誇張したフィクションだとしたら ただのエンタメとして楽しんだり恐怖誘導に注意すればよいだけ

ただもしも本当の・見えないようにされてきた現実だとしたら 

現代世の中に知れ渡っているあらゆる武術・格闘技などの戦闘技術 無制限に・誰にでも教えてきてしまった武術家・格闘トレーナーたちは

自分たちがしてきたことのツケを支払わされることになるのかもしれない

 

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