アイツは生きていた 影に潜み続けていた

最低最悪最凶 悪意の塊でしかないのに…殺されなかった

すべて無駄だったの? 手のひらの上でしかなかったの……

それでも希望はある 一人暮らしは大学生の特権だしね

 

松岡圭祐さんの 【高校事変17

 

―――「おっさん、あんたが率先して変えればいいじゃね?」

「私が戦時中の一市民として、公務員の要職についていたとしよう。国の方針にはおおむね賛成していて、自分なりに職務で貢献しているが、軍事とは無縁の立場だ。情報もすべて入ってくるわけではない。そんなときどうする? 一部の急進的な動きに批判精神を持ちながらも、何が起きているか詳細は不明。ただ国を支えたい信念はある」

「おいでなすった。責任転嫁だろ。大人たちの卑怯なやり方」

 

絶望にとらわれる感覚を、このところ結衣は忘れかけていた。今はっきりと思い出した。慄然とするばかりで思考がまともに働かない。感情までも制御が不可能になる。猛獣を前にした小動物のようにすくみ上がるだけだ。理性を喚起しようにものその勇気すら生じえない。たちまち死を覚悟させられ、屈服の心を余儀なくされてしまう。

魂が体を離れ、散り散りになって薄らいでいくのを感じる。結衣は小さな子供の頃に戻っていた。涙が滲み出してもどうにもできない。泣き叫ぶばかりの凛香の気持ちが痛いほどわかる。いま結衣の中にある感情もまるで同じだった。

 

琉那のなかで困惑が深まった。イエメンやサウジアラビアのゲリラ部族にも、カリスマ的なリーダーは大勢いた。しかし彼らは揺るぎない信念を示すことで同胞を魅了してきた。優梨匡太の気質は根本的に異なる。集団殺戮に興じるばかりの悪意の塊が、どうやって人心を掌握するというのか。だが現に優梨匡太は若い頃から、多くの半グレ集団をまとめてきた。

 

―――「琉那。日本はとてもいい国。でも純粋だから悪意に振り回されやすい。今のところ優梨家だけがその悪意の象徴だけど……。変えていくのが私の人生」

琉那は意外に思った。「希望を感じてるんですか?」

「ええ。希望はある」結衣はうつむきながら静かに告げた。「生きてる限り希望はある……」

 

 

 

まさかまさかの……生きていたとは

あまりにもアッサリ死刑にさせられたけど それが逆に現実感がある終わり方だっと思っていた

でもここまでシリーズが続いて 長男も倒した後まで続けるとなると……嫌な予感はしていた

ただ改めてその事実を告げられると どうも現実感が沸いてこない

どうして奴を死刑にできなかったのか? そこまで日本人はどうしようもないのか?

なぜ奴には 対峙する人を魅了してしまう魔力が備わっているのか……?

心理学や科学知識など リアリティにこだわってる作者があえて「魔力」と描いている

千里眼・クラシックシリーズで出てきた悪の親玉・猫目のマリオン=ベロガニアと同じ「カリスマ性」なのかと思ったけど どうも違う種類の人格

ソレが作者の趣向・作品内の悪人たちに資金や人材や運勢が集まってしまう真の理由 なのかとも勘ぐってしまった

けど間を置いて考え直してみると 今の時代風潮や人々の考え方をトレースしているだけなのかとも思えてきた

 

週間少年ジャンプの【呪術廻戦】 その大敵たる両面宿儺の在り方

己の快・不快のみが行動の指針で ソレを押し通せる異形と呪力と知力を備えている

のみならず 作者から寵愛を受けていると揶揄されてしまうほどの運勢まで備えている

なぜ奴なんかを優遇するのか? 因果応報や勧善懲悪がなされないのか?

これから誰もが納得できるような大団円が見えてこない 人類絶滅のバッドエンドすら見えてしまっている現在

どうしてそんな不快と不満が残るだろう展開へと向かわせるのか…… 作者の人間性を疑ってしまう

でも二つは一致している ともに現在の時流・風潮・人々の嗜好を読み取り描き出すプロフェッショナル

ならソレこそ 今の人々・特に日本人が欲していること

願いや嘘や常識感などの幻想を剥ぎ取り尽くした 剥き出しの本音

「誰かこんな国、ぶっ壊してくれないかなぁ?」

改善するためやら家族・愛する人だけは特別 なんて人として当たり前にある本能すら不純物

殺してもなお殺しきれないゾンビ相手に手加減や情けなんてのは むしろ害悪 相手はソレを油断としか感じない

徹底的に遂行できる原子爆弾のような存在に 誰もがどうしようもなく魅了されてしまうのは必然

もしかしたらそんな「本音」を投影したからこそ こんな話の展開になったのかもしれない

 

さらにもう一つ ちょうど発刊の半月ほど前におきた大事件

池田大作の「死亡」通知――― 

すでに亡くなってはいただろうけど マスメディアがはっきりと宣言した日

アメリカのキッシンジャーと同様 日本の悪の親玉・フィクサーでもあっただろう池田大作

実際におきた重大社会事件を作品に積極的に取り込んできた高校事変シリーズ 予見までされたとかも

あまりにも発刊に近すぎたため 作品に取り込むことは不可能なはずだけど

日本を裏から操り破滅へと向かわせ続けたフィクサーとの共通点から もしやモデルだったのではと

与党政権とべったり癒着してきた宗教団体の真の長 との共通点もあり

なぜか生かされたり悪党たちが優遇されているのも 彼がモデルだったのなら納得できるものがある

千里眼シリーズは昭和日本の正と邪を描き出した

なら高校事変シリーズは 平成日本の正と邪を描き出しているのかも

もしもそうだったとしたら シリーズはいったいどういった結末をむかえるのか……

どんなものであれ昭和の闇より平成の闇は 黒くおぞましそう

 

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