この地球上から 戦争を無くす

武器を手にする者達に災いあれ 罪人を焼き尽くしたまえ

コレは天誅である 何人たりとも万能の瞳からは逃れられない……

しかし気づけぬかな 真なる全知全能の行き着く先を

 

松岡圭祐さんの 【千里眼の死角】(クラシックシリーズ

 

 

「自我が存在しないコンピューターに催眠誘導が通用するわけないじゃない」

「そうでもないんだ。プロアクティヴ・コンピューティングの時代に生まれた人工頭脳は、人間の思考回路を参考にしている。メカニズムとして共通している部分もある。自らの判断でハッキングを拒絶できるコンピューターか、すごい時代になったもんだ。だが、そんな時代だからこそメフィスト・コンサルティングは新たな侵入方法を見つけ出した。正確には侵入じゃなくて支配と呼ぶべきだろうな。コンピューター・ウイルスじゃなく、コンピューター・ヒプノタイズの技術を開発したんだ」

「催眠化……」

 

―――本人が救われたがっているがゆえにカウンセラーという道を志す、世の中にはそういう人種がいる。彼らは一見、職務に熱心だが、実はこれほど職業に不適切な人材はない。相談者との面接の場でもいつも視野が狭く、主観的で、自分が傷つくことを恐れ、相手よりも自分が救われることを願う。私だけはそんな人間にはなるまいと決めていたが、その思いとは裏腹に、実際には自分こそがその最たるものであるかのように感じられてた。世間は私を千里眼と呼び、万能視し、優秀なカウンセラーだと決めつけている。だが事実はそうではない。そのことは、自分が一番よくわかっている。

 

嵯峨は、美由紀の顔に目を落とした。真っ白に染まった肌、閉じた瞼はぴくりとも動かず、呼吸の気配もない。

その顔を眺めているうちに、嵯峨の中に決意が湧き上がった。諦めてはいけない。目を背けることは許されない。たとえ絶望が、いま存在するあらゆるものを覆い尽くしたとしても、まだ未来が残されている。一秒先には未来、生きていれば、まだ機会はある。

 

私がいたから。その言葉が胸に響いた。

そうだ。力及ばず助けられなかった人々も大勢いる。私は理想に及ばない落語者かも知れない。それでもわたしは、この世に生き、少なからず人々の人生を、幸福を支えてきた。私がいる世界、生きることは、なんと尊く、価値が有ることだろう。今私は、その人生という道のりを旅し続けている。それを許されている。

現実の世界の思考が、ここで何があったのかを明確にし始めた。私は暗示を受けた。嵯峨の暗示によって、自らの意義を悟った。嵯峨がわたしを救った。

「嵯峨君」美由紀は嵯峨の顔を見つめ、つぶやいた。「ありがとう。わたし、本当に……。言葉が見つからない」

いいんだよ。嵯峨は微笑みとともにいった。「すべてが闇でも、未来がまだ残されている。生きている限り、希望はある。最後まで諦めないのは当然のことさ。それを教えてくれたのは、君じゃないか」

 

計算の遅れから、人は矛盾に気づかない。行き着くところは、死しかないという矛盾に。しかし速度が上がれば……。現に、あの思考するコンピューターはその領域にまでいたり、死に行き着いた。

けれども……。私たちは違う。思考だけで存在しているのではない。人工頭脳が持ち得なかったか感情がある。

誰にでも、生きることに価値を見出す権利がある。

どんなふうに行き、人生をどのような価値に高めていくかは、全て自分しだいだ。

 

 

万能のコンピューターに催眠をかけて操る―――

外部から無理やりこじ開け・押し込み コントロールを奪うのが従来のハッキング

ただの計算機ならばソレが答えだったけど 人間の代行を務めれるようになったことで話が変わった

強盗には強くなったけど 詐欺師に騙される愚かさを表してしまった……

まさにこの【千里眼】シリーズとSF設定を和合させたような物語 のみならず今まで見たこともないアイデア

さらに 不可能と言われてきた自殺を強要できる催眠暗示 強制的なレム睡眠状態の圧倒的理不尽

著者の話作りの才能には脱帽です

 

ただ これだけ地球全土で暴れまわっては軍事力を根こそぎ破壊した後の世界

いやがおうでも平和にならざるを得ない 復興のために争っている場合じゃなくなるはず

……とはならないてのは 呆れかえるしかない人類の業

シリーズを続けるために分けて考えているだけ てなメタ的な理由もあるだろうけど

じっさいに人類は世界大戦を2回もたてつづけに決行した 今も戦争経済とのことでテロとの戦いに明け暮れてる

「カネのため」という動機は そこまで無尽蔵なエネルギーを生み出せるものなのか……

神様が鉄槌を下さず黙って見守り続けているのは 武器を必要とする過渡期だと見越しているのかも

戦争を無くしたいのならまず自分から 

大宇宙における最強の武器は物理法則 因果応報の理にあり

天誅を下せば己が砕かれる 見守るしかできない

……あるいはもしかしたら すでに砕かれてしまったからなのかもか

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