看護師を目指す動機としてよく聞かれるのがこの「看護師は食いっぱぐれない」である。

不景気が長く続き、非正規雇用社員の増加や低賃金化、職業格差が広がる中などかなり不安定なこの日本社会の中で、雇用の需要がある職に就きたい!と思うのは自然な発想だと言えよう。

 私も似たような動機で看護師を目指している1人である。私は社会性の部分が未成熟で、うまく人間関係や社会で組織人をしていく自信が全く無いポンコツ人(ポコンチュ)である。そんな私が高校の進路選択の時に考えたのが、「一度やめてもまた働ける職に就きたい」というものであった。例えば、普通の大学に行って一般企業に就職をしたとする。しかしその職場が自分に合わず辞めることとなったときに、手に職がない短期離職した人間がまた働くとなると、給料の下がるところにしか就職ができないのでは、下手したら就職できないのでは?と悩みや不安があったのだ。その点看護師だと、国家資格の職業でどこで働いても看護師として働くことになるためある程度の賃金は出してもらえる(労働の負担には釣りあってないが)。再就職も看護師は幅が広いためどこかしら自分にあう領域や施設があるかもしれないという希望が持てる。また、どこもかしこも看護師不足のため求人が無いと事態は防げると見込んだのだ。

 高校生の私なりに考えて看護の道に進むこととなったのだ。



 だが最近、看護師は本当に食いっぱぐれ無いのかと考えることが増えた。

 というのも、看護師という職業は潜在看護師という資格を持っていても看護師を離職している人が多いことでも有名なのである。(現在たしか70万人だとか…)

 働けるはずの仕事なのに、働いていない人が多い。。もちろんライフステージの中で出産子育て、結婚による専業主婦に転身したことによる離職が多いだろう。

しかし、上でも書いたが、現在の日本は共働きしないと子育ては厳しい、結婚しても共働きが当たり前という考えが一般的になりつつあるほど、ライフステージの段階を問わず働き続けることが一般化している状態である。専業主婦が当たり前の時代で子育てをしていた世代はそろそろ子供が高校生大学生になり子育てに手がかからなくなり、パートなどし始めようかなと考える人もいるのでは無いだろうか。

 前置きが長くなったが、看護師と言う職業は、資格を持っていてもリタイアする人が多い職業なんだと思う。子育てなどで一度やめると、目まぐるしく変わる医療常識や体力が必要な仕事内容のことを考えると、同じパートで扶養の範囲内で働くならスーパーのレジ打ちの方が人の命を預からないから良いと思うのではないだろうか。

 ライブイベントにかかわらずとも、あまりにも責任の重い、命を預かる仕事であることや、それにしては賃金が安いこと、仕事内容はマルチタスクで複雑、仕事場は命を預かる緊張感からユルユルとはしてられない。そのくせ3k(キツイ、汚い、危険⚠️)という仕事の過酷さから一般職に転職する人や結婚をして辞めてしまいたいと考える人も少なくないだろう。また、過酷さや、職場環境からメンタルの調子を崩し、休職退職する人もいるような職業である。働き出してもやっていける補償はないのである。

 看護師として働きたいと思うには看護師という職業は過酷でそのわりには、対価や待遇、働く環境が見合ってないため、一度働いてみるとその現実に嫌気がさし、看護師をしたくなくなるのではないだろうか。

 政治家の公約で看護師の賃金を上げるなど掲げているのをみたことあるが、上がった!と喜んだ人はSNSをみている限りお見かけしない。

 それに比べて、毎年のように新人看護師が心の体調を崩し休職退職していくはよく見るものだ。


 これらのことから私は、看護師という職業が食いっぱぐれないとは言い切れないのではと思う。もちろん、昔の世代としては女で長く働いていける職の代表が看護師だったため看護師は女にとって食いっぱぐれない自分の力で生きていくための甲斐性のある職業というのはあっただろう。しかし、女性の社会進出が進み様々な職業で女性が自立して働いていける昨今では、看護師と言う職業のメリットは相対的に減っている。看護師として働ける枠があったとしてもそこで長くやっていけるかはわからないし、調子を崩し働けなくなる可能性もある。食いっぱぐれないのは看護師に適性のある人たちだけで、看護師になれたからと言って、生涯働いていけるとは限らないのではないだろうか。

 そう考えると、進路に迷っている若人に「看護師は食いっぱぐれないよ!」とその子の性格や能力を考えず軽く言ってしまうのは無責任な気がする今日この頃である。