神戸映画資料館特別上映会に参加しました。演出・井上 | 記録映画保存センターブログ

神戸映画資料館特別上映会に参加しました。演出・井上

神戸映画資料館特別上映会に参加しました。
『キャメラを持った男たち―関東大震災を撮る―』がキネマ旬報ベストテン・文化映画部門で一位に選出されたことを記念して、神戸映画資料館で上映が開催され、トークゲストとして参加しました。

 
100年前の震災を撮影したユニバーサルカメラをお借りしたり、〈日活版〉とよばれる高坂利光が撮影した震災フィルムのデジタルデータを貸与してくださったりと、神戸映画資料館にはこの映画を作るにあたって多大なご協力をいただきました。ですのでこの度の上映はそのお礼ともいうべき機会でした。受賞トロフィーはとても重いのですが、是非この重さを共有したいと考え、館長の安井喜雄さんをはじめスタッフの皆様、そしてご覧いただいた方々にも持っていただきました(画像は安井館長)。

 

 

資料館は長田区にあります。1995年の阪神・淡路大震災でのこの地の被害はまだ皆さんの記憶に残っているかと思います。映画賞を記念するだけにとどまらず、この地で上映するからには震災と映画に関連するテーマを際立たせたいとも考えていました。

 

そこでイベントの初日は、上映後に神戸市にある阪神・淡路大震災の伝承施設〈人と防災未来センター〉で震災資料を研究しておられる林勲男先生と災害映像記録を巡るトークを行いました。〈人と防災未来センター〉にアーカイブされている映像は主に被災された市民の方々が8㎜ビデオやVHS-C、ミニDVといった、当時のアマチュア映像メディアを使って撮影したものが多いのです。内容も自宅やその地域の被災状況、車窓風景にみられる交通インフラの復旧、ボランティアの活動、倒壊した町の解体から整地といった、記録者の日常に根差したものが主です。関東大震災のフィルムでも、路地に避難する人々の様々な表情が写されていることに興味を持ったという林先生ですが、100年前の震災映像の中にも当時の人々の日常が写っていることにあらためて映像の記録性というものを考え、感じることができました。


震災記録映像を見るというとすぐ防災に役立つ視点を、という風な話に持っていきがちだけれど、記憶を呼び覚ますことや被災で受けた心身の傷を治癒するツールにもなりうる。その時代がまとっている文化的なものも写っている。映像は豊かであり、様々な観点から学べるものがあるので、アーカイブされた映像記録からどれだけのことを抽出できるかが今を生きる私たちに問われているのだと、林先生とのトークから学びました。(画像は右が林先生・左が井上)

 

イベント二日目は、上映後に観客の皆さんと感想や意見を交わしあうカフェトークをおこないました。ユニバーサルカメラを間近に置いて、100年前のフィルムをどう今に響く映画作品として活かしていくかについてお話ししました。先の能登半島地震で神戸に避難されている方や阪神・淡路大震災でご苦労された方々からの感想にも接することができ、震災と映画というテーマに重みと奥行きを与えてくださいました。(演出・井上)