前回までにたくさん回り道をして、ハウスシステムがとても大事だということがわかりました。

 

これほどに重要なハウスシステムの問題に、西洋占星術の長い歴史の中で、たくさんの天文学者、数学者、物理学者が取り組んできて、唯一正しいひとつ、にならなかったのは。

そもそも、立体空間である天空を分割して地表面という2次元に再現しようとすること自体に無理があるからです。

 

世界地図を思い浮かべてみてください。南極北極が大きく広がっていますが、平面で表すにはそう描くしか仕方がないですよね。

 

唯一無二のハウスシステムはありえず、あくまで近似値で考えるしかないのです。

 

ハウスシステムで、一番大事なのは、東の地平線を表すアセンダントと、天頂を表すMC、そしてこの2つの点でホロスコープを分割する縦と横の2本の軸です。

 

ところで、ASCの横軸は、東の地平線と、西の地平線と説明されることがありますが、実は、西は地平線にはならない場合の方が多いのです。

 

 

地球はこんなふうに、23度倒れながら回転(自転)しているので、たとえば北半球の日本では、冬至の時期、昼が短く、夜が長くなります。

日本の昔の時間法がこれでした。日の出(のおよそ30分前)から日の入り(のおよそ30分後)までを6等分して、一刻としていたのです。ですから、夏は昼の一刻のほうが長く、冬は夜の一刻のほうが長く、春分と秋分だけは、両方が等しくなっていたのですね。

日の入りと日の出が一直線じゃないのがわかりますね。

ホロスコープの横軸は、東の地平線と“その反対側”、と言うべきでしょう。

反対側、でいいのです。なぜなら、命の息吹がやってくる東の方角の反対側は、自分に対する他者、という意味になるからです。

 

ホロスコープの縦と横の2つの軸で区切られた4つの空間を、さらに区切っていこうというのがハウスシステムの基本です。

たとえば、日本で一番多く使われている「プラシーダス」は、4枠をさらに等時間ずつに分けて12ハウスとしました。

ところが、このシステムは高緯度、低緯度では極端に片寄りすぎて使えません。

 

アラスカの冬に生まれた人の出生図(プラシーダス)…1、2、3ハウス、せまっ!

 

「コッホ」は、プラシーダスの改良版です。高緯度地帯でも少し使いやすくなっていますが、やはり極端な緯度地帯では使えません。

 

「レギオモンタナス」は、4枠を、時間ではなく、空間で等分割したシステムです。合理的ということで、支持する占星術家も多いのですが、プラシーダスと同じく、高緯度地帯では使えないという欠点があります。

 

「キャンパナス」は、レギオモンタナスと同じく空間分割ですが、アセンダントやMCなどの点を中央において、その間を等分したものです。つまり、レギオモンタナスのハウスの境目(カスプ)が、ハウスの中央に来るわけです。ハウスのカスプこそが重要というところからできたシステムです。

 

そうです、大事なのはカスプの“両側”なのです。

そこから、5度前までは次のハウスに含めるという、5度前ルールというのができました。

結局ハウスの分かれ目というのはどう分けようともハッキリしていないのですよね……。なんとなくこの辺りがこう、というゆるい分かれ目なのです。

 

逆に、星座の分かれ目はハッキリしています。0.1度でもその星座に入ればその星座。0.1度でも過ぎたら次の星座。分かれ目は、きっちりです。

暦を使う東洋占いもそうですね。1〜3時は丑の刻ですが、3時を1秒でも過ぎたら、虎の刻です。5分前から虎っぽさも加わるなんてことはありません。

 

ハウスにはそういうくっきりした分かれ目がないのです。虹のようになだらかに、色合いが変わっていくと考えるほうが近いかもしれません。

 

2軸から離れた分割法としては、アセンダントから30度ずつ区切った「イコールハウス」がシンプルですが、ハウス分割の根拠が薄くなってしまいます。

 

そして。

最後にわたしがたどりついたのが、「ホールサイン」でした。実際に使ってみて、一番使えると感じました。

 

↑牡羊座アセンダントの例>

 

「ホールサイン」は、アセンダントが入る星座を1ハウスとして、あとは星座の分かれ目で区切っていきます。

近年注目が高まっている古典占星術でも使われてきた実用的な分割法です。

 

ホールサインが実用的な一番の理由は、そもそもくっきりと分かれている星座の境目がハウスの境目になっているからです。

さらにアスペクトを考えるときに、そもそもアスペクトが「星座」と「星座」の関係性からできたという意味で、整合性があります。

星座が変わると、衣装を脱ぎ捨てるように、その惑星の性質や表現方法も変わります。ハウスも、星座の境目で変わると考えると、シンプルに「当たる」のです。

古典占星術を知って、一番収穫だったのが、このハウス法を実践に使うようになったことです。

 

実感として、使える、当たるハウス法と思います。

縦のMCの軸が、4と10ハウスにならない場合があるという問題点はありますが、そこは両方の意味を複合的に読むことでカバーできます。

 

わたしの結論。

出生ホロスコープではホールサインが一番と思います。

ただし、ハウスが重要な鍵となるホラリー占星術をされる方は、レギオモンタナスを使う方が多いそうです。(いけだ笑み先生の御本より↓)

 

ホラリー占星術

 

たくさんあるハウス法から、ご自身の一番読みやすいハウス法を見つけられたら、きっと西洋占星術がもっと楽しくなるはずです。

 

わたしもまだまだ学びを深めていきたいと思います。

次回、西洋占星術シリーズの最終回!

 

 

【↓3月21日Zoomでジオマンシー講座します】

 

高橋桐矢の本