曲を作る上で、

 

ベースラインというのは凄く重要で、

 

リズム、コード、メロディー全てに関与する

 

唯一のパートと言えます。

 

 

録音環境がいくら良くなっても、

 

肝心の演奏がダメだと意味がないので、

 

ベースも毎日弾き倒しています。

 

 

 

最近導入したSadowskyというメーカーのやつ。

 

ベーシストならわかるであろう最高峰のアレ。

 

 

 

Spectorというメーカーのやつ。

 

もう15年くらいこれメインで曲作りに使用しています。

 

これにはちょっとした思い入れがあって。

 

 

ソロとして活動を始めたころ、

 

初の全国ツアーにあたって、

 

ミック・カーンがベースを担当してくれることになりました。

 

世界的なベーシストがよく僕なんかのサポートにと思いましたが、

 

実際、来日してリハーサル、本番をともに過ごす中で、

 

本当に魅力的な人だと思いました。

 

 

リハーサルの時、

 

ミックは昔から使用しているフレットレスベース一本しか持ってきておらず、

 

何かトラブルがあった際、サブで使えるようにと

 

僕は自分のSpectorを使わないかと彼に提案しました。

 

彼はSpectorを手に取り、

 

「良いベースだね」と言いながらひとしきり弾いた後、

 

ボディーの裏面に油性マジックで何やら書き、僕に返しました。

 

「え、何してくれてんねん・・・」と思いながら見てみると

 

 

しっかりサインを書いてくれていました。

 

 

どうやらミックは使い慣れたフレットレスベースしか思うように弾けないので、

 

弦ももう何年も張り替えていないということでした。

 

そういうことであれば、まあ良いかと納得しましたが、

 

弦は張り替えた方がいいだろ・・・とは思いました。

 

 

2011年にミック・カーンはこの世を去りました。

 

世界中の著名なミュージシャンが彼の死を悼む言葉を見て、

 

あらためて、凄い人だったんだと思いました。

 

 

短い期間だったけど、

 

張り詰めていた当時の僕に

 

「音楽ってもっと楽しむべきだよ」と寄り添ってくれた人でした。

 

 

ミックが勝手に書いてくれたサインの入ったSpectorのベースは、

 

これまで僕が作ってきた楽曲の全てに、

 

寄り添うように関わっています。

 

これからもずっとそうです。

 

 

作業に煮詰まって、気分転換にこのベースを爪弾くと、

 

あのジェームズ・ボンド的な、

 

セクシー&ダンディーな笑顔が脳裏にちらつき、

 

また勝手に何かされるんじゃなかろうかと、

 

ハッとするのです。