左臀部を打った

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俺はロックミュージシャンなので早寝早起きなんてしない。

 

朝、日が昇ってからじゃないと眠れないんだ。

 

やる事がたくさんあるからね。

 

イメージっていうのは夜中の方が湧きやすい。

 

不健康で良いじゃない。ロックなんだから。

 

 

昨日の明け方の事だ。

 

ベッドルームにインしてエアコンのスイッチを入れたんだ。

 

いつも点灯する電源のランプが妙な速さでチカチカと点滅している。

 

尋常じゃない速さだ。

 

当然、風もそよがない。

 

キリト、おかしいと思ったね。

 

エアコンが叫んでる。

 

俺に何かを伝えようとしてる。

 

「助けてくれ」ってね。

 

OK、わかった。そこ動くなよ。

 

エアコン本体の横にコンセントがある。

 

これを一度外してやろうと思った。

 

だけど、そこに触れるには高さが足りない。

 

別の部屋からチェアーを持ってくるのは面倒だった。

 

俺は眠いんだから。

 

部屋の隅には空気清浄機があった。

 

これを足場に出来ないか?

 

確認してみた。グラグラだ。

 

おまけに足を乗っける場所にはスイッチだらけだ。

 

それでも、その空気清浄機、足場にしたね。

 

足元でピッピピッピと音鳴り続けたね。

 

 

俺は抜群のバランス感覚で空気清浄機を足場にして

 

エアコンのコンセントを一度外し、また入れたね。

 

そしたらエアコン、「ピッ」と鳴って戻ったよね。

 

いつもの感じ。

 

「イッツ・ダン(It's done)」

 

そう呟いて、俺は慎重に、グラグラな空気清浄機から降りようとした。

 

 

曲芸師並のバランス感覚で降りたよね。

 

少しグラついたけど。

 

ただ、その少しがマズかった。

 

背後にあったベッドの外枠。

 

そこに足が引っかかった。

 

それでも俺は慌てなかった。

 

後ろに倒れ込みながらも至って冷静に、

 

「オーライ、マットレスに身を委ねよう。」

 

緩やかに弧を描いて、ベッドに倒れこんだ。

 

一回転したよ。

 

ただ、少し回りすぎた。

 

ベッドの向こう岸まで回転したんだ。

 

俺の尻上部、向こう岸のベッド外枠に強打した。

 

 

強烈な痛さだったよ。

 

あれに比べたら、胸のタトゥーなんて可愛いもんだ。

 

俺は尻上部に手をあて、床にうずくまった。

 

声にならない声が出た。

 

 

今も触ると少し痛い。

 

軽い打ち身だ。

 

ほっときゃ治る。

 

 

身体の痛みより、心の痛みが今となっては強いかもしれない。

 

 

キリト、お前全然カリスマじゃねえよ。

 

なに一人でベッドの上回転してケツ打ってんの?

 

お前のこと信じて着いてきたファンがガッカリするよ?

 

お前の生き様に影響受けたとか言ってくれてる若いミュージシャンが泣くよ?

 

だってお前、一人でベッドの上回転してケツ打ってんじゃん。

 

全然カリスマじゃねえよ。

 

シャキッとしろよ。

 

 

なあ、出来るのか?

 

 

もう一度取り戻せるか?

 

神々しいまでのオーラを。

 

禍々しいまでの狂気を。

 

やれるよな?

 

 

OK、やり直せる。

 

何度でもやり直せる。

 

尻なら治る。

 

空が泣き出す。

 

鳥が羽ばたく。

 

 

 

(*以上、ヤザワ調で。)