ここは天国、僕は天使で名前は雛。
周りには同じような天使がたくさんいるんだ。
今日も雲の上から人間が住んでいる世界を見る、僕は人間が好きなんだ。
優しい人や可愛らしい人、個性的な人もいてその人達を見ているのがとても楽しい。
「…僕も一度だけ人間と関わりたいな」
ボソッとそんなことを呟くと隣からひそひそと話す天使がいて驚くような内容が聞こえた。
「そういや、知ってるか?雛っていう天使が次に大天使様に選ばれるって噂」
「あー、知ってる知ってる。あの子一生懸命に働くし明るいから今の大天使様から直々に候補に選ばれてるんだよね」
「でも、今他の候補達がそれを妬んで雛の暗殺を計画してるってのをさっき聞いたんだ」
僕が、殺される…?なんで?僕は何かしてはいけないことをしたの…?
僕は人間達を見る余裕なんて消えてしまって自分の翼で自分を包んで隠れる。
なんで僕なんだろう…僕はただお仕事をした後に人間を見て少しだけ関わりたいと望んだそれだけなのに…
褒めてもらえるのが嬉しくて頑張っていただけなのに…
「んっ…」
いつの間にか眠っていて何かの痛みで目が覚めた。
目を開けて周りを見ようとすると目の前にあったのは自分の翼が血まみれになったものだった。
「…な、にこれ……」
頭が追いつかず最初はきょとんとしていた。
暫くして頭の整理がつき翼をよく見ると片方の翼が半分切られていた。
「な、なに…なにこれ…痛い…なんで…なんでなんで…」
本能的に僕は走り出した。
丁度他の天使達は周りに居なかったから今は地獄に見えるような天国から逃げたくて傷つきたくなくてとにかく走り出した。
暫く走ると人間たちの世界が見えた、いつの間にか足を踏み外していた。
「…よかった」
地獄に見えた天国から逃げられたそれだけで僕は安堵した。
もう自分がどうなろうとよかった。
人間の世界に行けたらきっと大丈夫だとそう思ってた。
人間の世界に落ちてからもう何年経っただろう…。
落ちた世界は天国よりももっと地獄で酷い仕打ちが待っていた。
知らない人に声を掛けられ、天使は珍しいと売られ愛玩用として見せ物にされ、飽きたら捨てられるを続けた。
僕は怖くて声も出せずに日々を過ごした。
そんなある日、僕にとってこの世界に落ちて初めて嬉しいことが起こる。
それは路地裏に捨てられていた時だった。
「やぁ、君が落ちた天使くんかい?」
1人の男の人が僕に声を掛けてきた。
僕は天使だったから有名だったらしい。
また売られる、見せ物にされて叩かれる僕はそう思うと体が震えて声が出なかった。
「自己紹介をしようか。俺は架(かける)だよ、君の名前を教えてくれるかい?」
最初は皆そうやって優しく近寄ってくるんだ…。
もう怖いのも痛いのも見られるのも僕は嫌なんだ。
怖い怖い怖い全部が怖い…。
「……」
涙目で首を左右に振って必死に相手の問いに答えを伝える。
どうか殴らないで、蹴らないでと願いながら。
「せめて、俺のところへ来ないかい?不自由はさせないよ、それに暖かい食べ物もその綺麗な翼ももっと綺麗にしてあげられる。嫌になったり怖いことを俺がしたら幾らでも逃げてくれて構わないよ、ほんの少しだけ信じてはくれないか?」
架と名乗る男の言葉に涙目で驚いた。
信じてくれだなんて天使達からも言われたことがなかった、自分自身が信じれなくなっていることに初めて気づいた。
少し…ほんの少しだけ信じて見てみたいそう思って少し間を置いて小さく頷いた。
「じゃあ、行こうか。俺の家に」
架と名乗る男は薄汚れた僕を抱きかかえて馬車へと乗り込んだ。
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