われわれは体中の異物を排斥する病気という過程のなかに その痛みのうちに ひとつの有機体が ふたたび純粋を
とりもどそうとする心の働きを見ないだろうか
そしてそのときわれわれの体験となるものは 異物と痛みのどちらであろう
記憶の奥に抜きがたい根を張って もはやわれわれ自身となるものはー
この痛みという生きものは たぶんわれわれを解くための重要な鍵のひとつなのだ
なぜなら肉が激痛のとき 肉にかかわるどんな場所にわれわれの逃げ場があるだろう
われわれの全身は否応もなく魂のなかに避難して
一刻も早い時の経過を じっと願うことができるばかりだ
私的なものをすべて黙らせ そこで痛みが主人のように君臨するのは ぜひともわれわれには必要であり
私的なものより大事であり 私的なものよりすぐれたものの在ることを すぐれたもののひとりとして魂に書きつけているからなのだ
この万国共通の深い言葉は 魂に最も近い肉であり
此岸と彼岸をゆききできる選良のひとりであるだろう
そしてまた死の公平に導くための われわれの公平な教師でもあるだろう
石橋千濤詩集 荘厳歌より抜粋