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新しき世界へ

私たちは母なる地球の元に生かされて存在しています。
宇宙、自然、生命から「調和」「秩序」「法則」を学ぼう。

      新歌


わたしはどれほど惜しんだろう

時間と共に滅んでいった 美しいものたちを

そしてどれほど涙と共に見送ったろう

出会ったときには 常に最良のよろこびだったものたちを


わたしの嘆きの泉が尽きたとき

それまで 泉を支えていたものたちが歌いだす

それはわたしの知らない歌で 悲しいのに明るく

憂愁は軽やかな風のようだ


ひとつの言葉を知るために

いくつの風景が血を流したろう


わたしはもっと早く気づかなければならなかった

すべてのはじまりに おそすぎることはないことを


ごらん すべてが新しい

籠城の地下道だったものが 歓待のための大門のようだ

わたしは山奥の獣のように冬眠していたのに

春のようなおおぜいの子供たちに囲まれて 明るい道の上を歩いている


                             石橋千濤詩集より転載



肉体は生まれて老いて死んでゆく運命にあるけれど、人の本質である魂は時空を超えて存在していると信じている。


更生、甦る。


蘇民将来(将来に蘇る民)を信じている。

      旅のしたくを


さあ 旅のしたくを

最初の不思議や 謎や神秘や

おとなの興味の尽きたところでふたたびはじまる興味への -ー

そしてまた 何かがわかりかけたと思うまもなく 生活のため

ことごとく中断されてしまったあらゆる途中への


わたしたちはもう充分に知りすぎた

ひとのつくった戦場で 昨日の勝利が意味もなく

今日は敗北とならなければならない塵労の明け暮れを --

そしてまた あらゆるものからの被害者が

同時にあらゆるものへの加害者となる物質界の因果律を


苦労して養った知恵や思想が 台詞のように定められているために

真剣とはなりえないのをわたしたちは何度も見た

またこここそはと思えた場所もひとたび刃を交えるや たちまち木刀のおとがして

舞台や遊戯場に変わりだすのをわたしたちは何度も知った

そして勝者のときも敗者のときも

そこで得たものの あまりのおなじさと小ささとに驚いている

それらはほんとうに存在する塵ひとつよりも軽いのだ


さあ したくを 旅のしたくを

わたしたちの内部で困難という城を築いている敵に向かって 

そこで攻めおとしたものだけが 不変の勝利となる闘争に向かって -- 

ひとりの戦果がそのまま世界の利益となるような わたしたちを増すための   

さあ 旅のしたくを  


                             石橋千濤詩集より転載




表も裏も知って世界を俯瞰する視点も持たねば 

若い頃は死ぬことが怖かったけど、今は日々よく生きることだけ。

結果は生死さえも天にお任せ、何も怖いものはなくなった。

これが安心立命の境地というのだろう。


       詩作


わたしの感覚は自慢の翼を武器に

あっというまにわたしを置き去りにして飛んでゆく

まるでわがままな弟が まじめな兄をからかうように


日はこれから昇るというのに 彼はもう山頂に立ち

いつものように焦れてから

ちゃっかり居眠りしてしまう なぜなら

歩みの遅い兄の到着は ずっと後のことであろうから


わたしは観念して一歩一歩登ってゆく

風景に見落としはなかったか

その音と色と臭いとに誤りはなかったか

彼の軌跡は正しかったか

その一点を 異端の足が踏まなかったか

面倒見のよい教師のように 誠実の目を一歩一歩 ーー


日が落ちかかるころ わたしがようやく辿り着くと

彼もちょうどそのころ目を醒まし

わたしの方へ手をさし向ける

二人の目が ちょっとの間緊張し

やがてほほえみに変わるとき わたしの心のポケットから

何かがぽとりと落ちる




       詩想


おまえたちに命を与えたのはわたしなのだ

わたしの言葉が滅びたら 誰に呼び寄せることができるだろう

広漠の空間に散らばったおまえたちを

そして誰に着せることができるだろう

それぞれに似合った衣装を


ごらん おまえたちははじめてこの世の光を見る子供のように

目を見開きながら わたしの詩のなかを行進している

ひとりの牧人しか知らない羊たちのように

わたしの吹く 笛の調べにあわせて


おお おまえたちはわたしの心の手足のようだ

わたしの内部に存在し まだ誰も通ったことのないどんな細道にも おまえたちは入ってゆく

そしてたとえわたしが巌の腕に捕らわれても

おまえたちの翼はわたしを連れて 軽々と大空へ飛んでゆく

ちょうど 遺伝子の鎖を断ち切った生きもののように


                       石橋千濤詩集より転載


      秋


重量がすっとぬけたように

秋の足もとに倒れてゆく夏の光たち

昨日までは王者のように まぶしい翼をひろげていた


昨日と今日の契約には どんな火花が散り

ふたりの目から厳しい涙が流されたか

夏がどんな断念に克ち 次の命をいとしみながら 

秋の血のなかに おのれの告別の血を注いだか


彼らはめぐっているのではない

いったいどこに回帰があるだろう

今年の夏も 去年の夏とおなじように

ひとつの生を生きたのだ


夏の胎衣をすっぽりと脱ぎ その養分を消化して

まったく新しいひとのように 秋が

そっとわたしにほほえみかける

晴れやかな空に わずかに涙のあとを映し

すでに 一つの予感をこらえながら


                     石橋千濤詩集より転載




万象万物に変わらぬものは何もなく、常に変転し続け消滅と再生を繰り返している。


冬の糸(意図)と書いて終わりと読み、また新しい春を迎える。


宇宙の元と書いて完


善人も悪人も、天使も悪魔も、最後はみんな完となるときがくる。


われわれはみんなひとつの大きな円(縁)のなかに存在している。