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愚僧日記3

知外坊真教

 東京のお寺で住職が業者によって殺されるという痛ましい事件が起きてしまいました。報道によると、住職の寺で一般に売り出した墓地が売れなくなっていたところで、住職が墓地を提供する人を既成仏教の人にだけにすると言い出した事で業者と対立したのが動機のようです。

 

 高齢化した日本社会は、年間150万人を超す人が死ぬ時代になっています。この数字は太平洋戦争当時の日本人の死者に匹敵する数字です。


 年間の死者数は予測できる数字ですので、葬祭事業や墓地関連事業に様々な業界の人が参入しているのが今の日本です。ところが、あきらかに供給過多になっていて、都心では過当競争になっています。

 

 葬祭業者は低価格を前面に出して、まるでスーパーの広告です。墓地もあらゆる媒体で売り込んでいます。死ぬ前から便利な墓地、安い墓地、中にはより後始末が楽な墓地を売り込もうと必死です。しかし、一方では葬儀や遺骨の処理の仕方を後悔する人も出てきているのが実態です。

 

 最近都心で心配されているのは、こうした業者によって建てられた納骨堂や埋納施設が、バブルが弾けたように倒産や撤退した後の遺骨の行き場所です。そうした懸念から、買い控えも起きていて、そんな心配の矢先の今回の事件です。

 

 しかし、これを対岸の火事として見過ごすわけにはいきません。実は私がこの寺に来てから、墓地を原則檀家さんになる方にのみ提供するようにしました。本来信者組織は寺院の援助団体ではありません。そもそもサンガ(僧伽)という仏教の信者組織は、相互扶助の仕組みです。

 

 キリスト教では生きている人も含めて助け合うために病院や福祉施設を昔から運営していました。仏教も昔は療病院や施薬院という助け合いの施設が併設されていました。元来助け合い支え合う仕組みがあったのです。

 

 現代の墓地は自己責任で管理する仕組みになっていますが、信徒の皆さんにお寺を支えて貰うことで、皆さんに葬儀や墓地の心配なく過ごしていただきたいと思っています。