きりく308号は、般若心経を取り上げてみました。般若心経は、「般若」という経題にあるように、仏教の般若思想の神髄を説くお経です。国民的なお経とも呼ばれますが、その内容は難しく私自身般若心経を皆さんに説明する自信がありません。
しかし、般若心経は真言宗徒のみならず前述のように国民的なお経で、歴代天皇が何度も写経されたことが歴史書に記されています。特に有名なのは、京都大覚寺に伝わる「勅封般若心経」と呼ばれる嵯峨天皇御真筆と伝えられる般若心経です。60年に一度開封されていて、直近では2018年に閲覧できました。
令和4年の天皇誕生日の際には、今上天皇が歴代天皇が疫病がはやると般若心経を写経されることに触れて
「歴代の天皇は、人々と社会を案じつつ、国の平和と国民の安寧のために祈るお気持ちを常にお持ちであったことを改めて実感しました」
と述べられたのは、とても印象に残っています。難しい般若心経ですが、最後の「掲諦 掲諦 波羅掲諦 波羅僧掲諦 菩提薩婆訶」という偈文に込められた私たちを励ます一句は、様々な執着に苦しむ私たちに、「しかたないよ でも大丈夫 がんばっていこう」という、あたたかな励ましの一句であることは尊いと思います。
そんな般若心経を私も写経して、四国の歩き遍路に持っていきました。2019年の春に愛媛県の札所で、私の後ろに並んでお参りしているデンマークから来た青い目のお遍路さん達に、奉納するために写経した心経二卷をおわけしました。
きっとヨーロッパのどこかで大切にされているでしょう。
あの年からコロナ禍でお遍路も止まっています。
65番から88番まで、いつになったら歩けるでしょうか。