今「成人スチル病」という珍しい病気で療養中のため、暇に任せてFacebookを眺めていると、マイカミュージックラボラトリー時代の教え子(シンガーソングライター)の声に関するカキコミがありました。
その中で「喉の調子を保つには1日歌ったら数日休まないともどらない、連日人前で歌うようなことはちょっと厳しくなった。声もハスキーを通り越した嗄れ声に。経年変化か、不摂生か」というような内容があったので、次のようなコメントを寄せました。
「個人差はありますが誰でも加齢による声帯および声帯をコントロールする筋肉の劣化はあります。でもあなたの年齢で一度歌うと数日休養が必要というのは発声に問題がある証拠です。声帯は力で締めつけるのではなく、的確に閉じて豊かに振動させ、出来るだけ声帯に負荷をかけないという発声の基本を思い出して下さい。おそらく今はかなり喉声にになっていると思います。長く歌い続けて行くためにも発声には気をつけて(^ ^)」と。
するとその日、このブログにたくさんのアクセスがありました。
発声に興味のある方がたくさんいらっしゃるんだなと思い、病室から久々のボイトレtipsをお送りします。
まず、声を出すための初動は声帯閉鎖ですが、この声帯の閉じ方がその後の発声すべてに関わって来ます。
歌うと喉に力が入って喉声になってしまう。あるいは息が漏れて十分な声量が出ない。息が続かない。喉が痛くなり、すぐ声が嗄れてしまう。
こういった問題はすべて誤まった声帯の閉じ方が原因です。正しい閉じ方を習得すれば解決します。
ここで久々のボイトレtipsです。
まず、あなたの誤発声のタイプを調べましょう。
アー、と地声で発声します。ハーとなってしまうようなら閉じ方が甘いタイプです。
アーと出ているが同じ大きさで安定的に5~8秒持続できないようなら声帯を締め付けて喉声になっているタイプです。
この声帯を「閉じる」と「締め付ける」の違いを理解し「閉じる」を修得する事が基本の基本です。文章ではなかなか上手く指導できませんが、対面のトレーニングなら一回で理解できます。4回目の頃には修得出来ます。
さて、どちらの誤発声のタイプも声帯閉鎖を維持するために喉に力が入ってしまうのですが、この力は自分の意思でコントロールしている力ではないのです。
そのため「力を抜いて!」と言われても抜くことが出来ません。
歌の先生に言われて喉の力を抜こうと頑張ったけれど出来なかった、こういった経験をされた方もたくさんいらっしゃるでしょう。
でも、上手く力が抜けなかったのはあなたの能力不足ではないのです。
そもそも自分の意思で入れた力ではないのですから、自分の意思で抜くことは出来ないのです。
では、どうすればいいのか?
それは声帯閉鎖を安定的に維持できるような発声の初動を行う、つまり正しく声帯を閉じれば良いのです。
それでは簡単な練習方法をお教えしましょう。
●まず、大きすぎず小さすぎない地声で「アー」と発声します。
この時「ハー」に聞こえる人は声帯がしっかり閉じていませんので、「アー」と聞こえるようになるまで試行して下さい。
地声が良くわからない人は裏声ではない中音域の声を出せばOKです。
●次にその「アー」を同じ音量、同じ音程で揺れないように10秒続けます。
うまく続かない人は声を小さくしてやってみましょう。
この時、息が漏れて声が小さくなるのはNGです。
同じ「アー」の音色で音量だけ下げるように意識します。
その時に小さくしたはずなのに、むしろ声にエッジが付いて少し大きくなる感覚があれば大成功です。
声帯を締め付ける力が減って声帯の振動が大きく豊かになった証拠です。
この感覚がわかってしまえば、もう声帯に有害な力はかかりません。
つまり自分では抜くことができない「喉声の元凶になっていた喉を締め付ける力」を排除することが出来ます。
●ということで、文章では限界がありますが、少しでも喉声でお悩みの皆さんのお役に立てば幸いです。
ちなみに私の療養期間は7月いっぱいの予定です。
キリガヤ・メソッド、ボイストレーニングは8月より再開致します。