ブレス音にまつわる都市伝説 | 桐ヶ谷仁 の Wonderful Voice

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キリガヤ・メソッド 主宰 ボイストレーナー 桐ヶ谷仁のオフィシャルブログです。

ボイストレーナーを長くやっているといろいろな都市伝説に出会います。
これもそのひとつですが「マイクにブレスが入らないように鼻から吸った方が良い」という説。

ボーカルのブレスは口から空気を取り入れる(吸い込む)のが基本です。
理由はすでにこのブログでもお話したように的確な横隔膜の動作を行うためです。

ブレス音が大きく聞こえるシンガーも、ほとんど聞こえないシンガーもいますが、それは鼻から吸っているか、口から吸っているかの違いではないんですね。

小さな声で歌う人ほどブレス音は大きくなります。
反対に声量のある人ほどブレス音は小さくなります。

ブレス音は感情を表現する力を持つ場合もあるので、ブレス音を否定する必要はないと思います。
むしろ私は自然なブレス音はあって当然と考えます。
でも
まあ、これは好みの問題でしょうか・・・

以下、キリガヤ・メソッド 関連 ボイトレTips


発声時の呼吸は安定した腹式呼吸のため口呼吸が基本になりますが、ある受講生から「私はブレス音がマイクに入るのは良くないと思っているので、なるべく鼻で吸うようにしていますが、鼻呼吸でも腹式呼吸は出来ますか?」という質問がありました。


ブレス音、つまり息を吸う時の音ですが、質問された方の説によると「演歌は鼻呼吸なのでブレス音がない」とのこと。これは根拠の無い都市伝説です。

その誤りを認識してもらうために実験をしました。
まずマイクを歌う時のように近づけて口で息を吸います。
とうぜん吸気音がマイクに入ります。
つぎに鼻で吸ってみます。
やはりシュー!っと吸気音が入ります。
むしろ口で吸った時よりも音が大きくなります。

演歌などで比較的 大きなブレス音が入らないのは、口で吸うか、鼻で吸うかではなく声の大きさが関係しているのです。

マイクで収録された音声は聞きやすい音量に調整しますが、たとえば声量のある歌手の歌声の大きさが10、ブレス音の大きさが1とします。
歌声の大きさが5の歌手の場合は収録音声のボリュームを上げ音量を2倍にして10の声量にします。
するとブレス音も2倍になります。
つまり声量あるシンガーほどブレス音が小さくなります。
鼻で吸うか口で吸うかではないんですね。

僕は適度なブレス音が聞こえるのは自然な事だと思いますが、ブレス音にこだわる人も口呼吸、鼻呼吸は直接ブレス音には関係ないのですから口で効率よく吸気して腹式呼吸、つまり的確な横隔膜のコンプレッションを行い、より良い発声を心がけましょう。