②タロ・ジロの真実 | ☆えるわんこ☆

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一年後、第三次越冬隊員が再び宗谷に乗って南極の昭和基地を目指す。



大氷原の中に、黒く大きな影が二つ。

隊員は思わず目を疑った。

氷原に残した15頭の霊が、二つの影となって現れたのかとさえ思った。



「犬だ!」

「な、なにっ!」


「まさか、一年間も生きているはずがない。アザラシだろう。」


「いや、確かに犬だ…!」


「犬だ!犬が生きていたぞ!」



2頭の黒い犬が、氷原に佇んでいた。



モクか、ゴロか。

2頭はまるで小熊のようにまるまると太っており、隊員たちでさえ見分けがつかないほどだった。


野生化している可能性もあり、恐ろしくて誰も近づけなかった。


犬たちも警戒しているようだった。

恨まれているのも無理はない。
噛みつかれても仕方ない。


「おれが近づいてみる。
腕の一本や二本、食いちぎられたって仕方がない。
おれたちはそれだけ酷いことをしたんだ。」


北村隊員はゆっくりと近づき、身振りてぶりで話しかけ、号令もかけてみた。

だが、犬たちは無反応。


なんとか通じ合えないものか。


犬の頭を撫でたが反応がない。



「なあ。お前はゴロか?」


犬は頭を上げない。



「それではモク?」


15頭のうち、体が黒かった犬たちの名を片っ端から呼んでみた。


「クロ、フーレン、デリー…」



そして最後に

「タロ」

と呼んだ時、わずかにしっぽが動いた。


「タロ…?」

もう一度呼んだ時、今度ははっきりとしっぽが動いた。


「タロ!タロか!するとお前はジロだな?」

もう1頭の犬が、招き猫のようにひょいと右の前足をあげた。

これはジロのいつもの癖だった。


もう間違いはない。
タロとジロだ!



「なんとまぁ…」

北村隊員の顔はみるみるうちに涙にぬれた。


タロとジロも北村隊員のことを思い出したようだ。
激しく尾を振り、擦り寄ってきた。



「よく生きていた、よく生きていた…!」

あとは言葉にならなかった。

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再会を果たした北村隊員とタロとジロ。

左タロ、右ジロ