1014日。



生まれてから色々あって

数ヶ月経ったある日。


継続受け持ちで

あの日に手術室に入って下さっていた看護師さんと

主治医だった先生に



あの日の手術室で何が行われていたのか。

運ばれた先のNICUではどうなっていたのか。


聞いてみました。


今回は

生まれた時のにっちゃんについて書きたいと思います。




夜、緊急出産になると産科からNICUへ連絡が入りました。

 赤ちゃんには胸水があるし、大変な状態だと知らせがあったのでキューピッチに準備をしていたみたいです。

先生は当直で、もう1人自宅待機のお当番の先生とペアだったみたいで。

連絡が入って、詳しい内容を聞いて


「これは1人じゃ無理だ


そう思い、ペアの先生に連絡をして直ぐに来てもらったそうです。



そのペアだった先生は

看護師さんたちの間で

「蘇生のプロ」と呼ばれている程、

とても手技が早くデキる先生でした。



そして、お腹から出てきて。


呼吸を助ける為に挿管しましたが、

心臓が止まっています。


心臓マッサージをしましたが、

なかなか戻って来ません。


先生方が必死で蘇生して下さったみたいです。


強心剤を打って、お薬で無理やり心臓を動かしました。


微かに反応が見えてきて

蘇生ができたそうです。


次は呼吸を助ける為に、

肺に溜まった水を抜く処置として点滴針ほどの細い針を刺しました。


すると、そこからは水が出るハズなのに

全てが血液でした。

しかも、その血液は止まりません。

あっという間に100ccもの出血になり、

全身の血液が抜けてしまいました。


直ぐ輸血が用意され、

血を止めるお薬も打たれて、

難は脱しましたが


同時に行われていた採血の結果は

ヘモグロビンが1です。

血小板も白血球もほぼありません。

出血もしているので、赤血球もありません。


この状態で回復するハズがない

ましてや、体重は1200g

週数は28週。

肺も完全には出来上がってない週数です。



今にも切れそうな細い糸で

繋がっているような命の状況。



そんな状態の中

刺していた点滴が抜けてしまいました



もう十分に頑張った。

回復してもきっと、ただ呼吸だけをして

パパもママも分からない。

動く事も、喋る事も、笑う事も出来ない

重度の障がいが残るだろう



なので

点滴の刺し直しはせずに

にっちゃんの生命力だけを頼りに



医療行為は一旦全てストップしました。  



とにかく

にっちゃんの運命だけを見守る事にしたようです。




すると

にっちゃんの方から

「僕は生きる!」と

サインが出たそうです。



「この子は生きたいんだ!頑張りたいんだ!」



そのサインを受け止めて

新生児科チームは治療を再開したそうです。




生まれてから数日経った時に

新生児科の部長から

にっちゃんについてのお話がありました。




とにかく

あの状態から今生きているのは奇跡だと。

今まで何十年医師をしているが、

ヘモグロビン1で生きた赤ちゃんは見た事がないし、ヘモグロビン1すら見た事がない。

とても生命力の強いお子さんです。



とても苦しかったと思います。

とても痛かったと思います。

とても怖かったと思います。


だけど、ちゃんとお空で

「僕やっぱり生きたい!どんな体になっても、パパとママとにーになら大丈夫!」


て、にっちゃんが信じてくれたんだと思います。





ただ、その時の私は頑張るにっちゃんを見て、

生きてくれたものの

障がいがあるんじゃないか

何かあればどうしよう

パパとお兄ちゃんの未来を、

私は奪ってしまったかもしれない


未来が真っ暗になってしまい、

自分が家族に苦労を背負わしてしまったと、

自分を責めていました。




今は嘘みたいに逆の気持ちです。

何てお得な人生をにっちゃんは私にくれたんだ!って感謝でいっぱいです。

障がいなんてどうって事ない。

世の中、こんなにたくさん助けてくれる人がいて支援してくれる団体、福祉が充実している。

1人で子育てをするのではなく、みんなで育てる!しんどい時は頼る。

周りの優しさをたくさん知り、

頑張って生きている子たちの存在を知り。

障がいや病気の子がいるからこそ、

医療は進歩していけるんだと学び。

周りと比べる社会ではなく、マイペースに生きる。

障がいという世界は11人がただ楽しく生きるという、とてもシンプルな人生でいいんだと教えてもらいました。




だけど、当時はそんな事にも気づけなく…。



主治医だった先生にも

「ただ単に早く産まれただけの子よりも、

何か異常があった子の方が障がいを抱える確率は高くなります。」と聞いて



健常児がいい。

障がい児は嫌だ


強くそう思っていました。