手術の準備が慌ただしく進められていきました。



時刻は夜950分ぐらいだったと思います。



主人遅いな

無理かなアカンかったら行くしかない。



その頃には涙も引っ込んで、

とにかく早くお腹切って!

という気持ちで焦ってました。



そしたら、部屋に主人と私の父が入ってきて



主人「ちょうど病棟に入ってきたら先生と会ったから、お義父さんと一緒に話し聞いた。

お前それでいいの⁈」



と言われました。



私「何で?いいも悪いもそれしかない。」


主人「でも28週やで?

もう少しお腹の中で頑張らせたら?無理なん?」



私「いや、多分それアカンくなる。私何となくこの子私と離れた方が生きる気がする。今の医療技術は凄いから、私のお腹の中にいるより出た方が助かる気がする



主人「そうなんお前は大丈夫なん?」


私「大丈夫よ!麻酔するから痛ないし、最初から帝王切開なんやからお腹切るなんてどうて事ない。」



そう話してるうちに手術室に行く時間になりました。


私のこの選択を

訳もわからずただ信じてくれた主人。

不安だったと思います。

自分の体じゃないからわからないし。


ママである私を

何も言わずに信じてくれました。



だけど、私のこの選択はきっとにっちゃんからのサインを私が自然と代弁していたんだと思います。



ベッドのまま手術室へ向かい

主人と父に「頑張ってな!」と

見送られました。




手術室はとても暑く、入っただけで

ジワっ汗が出できます。


中は知らない看護師さんと先生ばかりです。


慌ただしく

キューピッチに全ての工程が進められていき、点滴や下半身麻酔を打ったら

動かないように両腕拘束されました。


私の胸から下に幕が付けられると

産婦人科の先生が私に顔を見せて



「お母さん!では今から切りますね!」



時刻は2230分。

手術開始です。



下半身麻酔は痛くはないけど、感覚はあります。

お腹をモゾモゾされていると直ぐに



「赤ちゃん出ます!」



という大きな声がしました。



1014

2235分。




お話しの通り

赤ちゃんは泣きません。




凄まじい勢いで

ガチャガチャカチンカチンと、

色んな医療器具を使ってる音だけが、手術室の中で聞こえました。


ちらっと産科の先生を見ると

先生もちらっと赤ちゃんを確認していました。



危険な状態。


嫌でも分かる、

張り詰めた空気に冷たい緊張感。


すると、赤ちゃんの処置をしている先生が声を上げて


「輸血!早く!」

「直ぐレントゲン!ここでやる!」


「早く!急いで!」


先生の怒涛の勢いで声を荒げている状況で、

赤ちゃんの命を必死に助けてくれているのが分かりました。


とにかく手術室にいる全員の気持ちが

赤ちゃんの命を見守っていました。



数分経った時

看護師さんが「赤ちゃんNICUにいきます!」

と言いました!


次に先生が

「お父さん、手術室に入ってもらって!」



私はその看護師さんの声を聞いて

「赤ちゃん生きてる!助かってる!」



そう思って、少し安心しました。


すると、

「お父さん入られます!」の声がしました。



主人に何か説明している様子はありましたが、何を話しているかは聞こえません。


そして

「赤ちゃん、お母さんの横に行きます!」



私は凄くドキドキしました。

どんな姿なんだろう




そして、私の横に来た赤ちゃんは、

先生の両手の平にすっぽり入る小ささでした。




動いてません。




私は「にっちゃん!ママいるよ!頑張って!」


と大声で言うと

赤ちゃんがビクッと動いたのです。



私は、生きてる!聞こえてる!と思い

「にっちゃん!頑張って!大好きだよ!愛してるよ!!にっちゃん!」


と叫びました。



またビクッと動きました。

そして看護師さんが

「お母さん、赤ちゃんの手を握って下さい」



というので、片手の拘束を解いてもらい

赤ちゃんに触れると



体験したことのない嫌な感覚。

冷たかった。



私は

生まれたばかりなのに冷たいと怖くなりました。


私の横に来た主人の表情にも

不安が現れていました。



NICUに行きます」



そう言って

にっちゃんは手術室からNICUに行きました。



NICU

赤ちゃん専用の集中治療室。

この日から始まったNICUでの日々。

この日に当直だった先生、夜勤だった看護師さんだからこそにっちゃんは助かったんだと思います。

そして、私にとってもこの時の先生と看護師さんに出会わなければ、あまりにも大きな出来事を11つ前向きに受け止めるのは難しかったと思います。



今こうして笑える日々になれたのは、

この日夜勤だったNICUの看護師さんのおかげなんです。


真剣に話を聞いてくれて

一緒に泣いてくれる。

一緒に辛いと言ってくれる。

苦しんでくれる。

なのに、私のこの辛さや苦しみを半分持ってくれる。

小さな変化に気づいてくれて、

小さな事に一緒に喜んでくれる。


泣いてる私の肩をずっと抱きしめて

一緒に泣きながら背中をさすってくれた。



私の人生にとって、とても大切な人です。



にっちゃんは分かっていたと思います。

自分を受け入れるのには、ママにとってこの看護師さんが必要だと。


自分の命を助けくれるのも、

この先生たちなんだと。



だから、今日生まれたら自分は生きれると。



にっちゃんが出会わせくれた

最高の出会いでした。