むかしむかし 少しむかし | 一石、月夜に(無駄)吠える。

むかしむかし 少しむかし

<つづき>

という訳で、おじいさんは夜になると素敵な峠を探しに毎晩出かけてゆきました。

おばあさんは寂しかったけれども、おじいさんが悪いことをしているわけではないので、ジッと待っていました。

もし、山に行かないでと言ったら、わがままを言っているような気がしていたのです。

おじいさんは調子に乗って毎晩山へ出かけました。

あるとき峠でいっぷくしていると、一匹の狸がやってきました。

狸は獲物を口にくわえて、おじいさんを横目で見ながら通り過ぎてゆきました。

巣穴で待っている子どもたちに餌を運んでいるのです。

おじいさんは、おばあさんが待っているお家に急いで帰りました。

おばあさんは、いつもより早く帰ってきたおじいさんを見て、嬉しくて涙が出ました。

それからというもの、おじいさんはせっせと仕事をして、さっさとおばあさんの待っているお家に帰るようになったということです。

おしまい

今日の出演:おじいさん、おばあさん、そして狸のおとおさん でした。