書道教室とコンプライアンス(法令遵守) | 日本習字教育財団 上海支部

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上海で活動を始めて11年目の日本式書道教室のブログです。
お知らせ、教室の様子、上海の教育事情、子ども達を取り巻く環境、書道史豆知識などについて書く予定です。

<前置き>

ちょっと重たい内容です。

この8年間ずっと見逃してきたが、就労ビザを持たない書道教室運営の再発防止の為に、過去の実情を公にしたいと思う。

 

 

以下、本文ーーーーーーー

 

外国人が上海で代価をいただき物事を教えるには、中国政府が要求する「外国人工作許可証」が必要だ。

それを持たず就労するなら、違法就労となる。

違反者に対しては、現在20000元以下の罰金。 

 

 

<不法就労者が運営する書道教室の実情>
上海市内で2012年~2020年の8年間で、就労ビザを持たない違法就労者の書道教室は3つあった。

 

一つ目は古北で教室を開き、2012年~2014年当時、最盛期は生徒数は百数十名を超えた。

古北地区に書道教室は何も無かったので、この教室には大勢の日本人が通った。

一クラスに約20名程いたそうだ。

資格のないアシスタントを入れ、指導補助もさせていた。

夫婦が先生と称して教えていた。主に妻が指導の中心だった。彼女は日本で書道教室のアシスタントをした経験はあったが、正式な書道教授の免許を持っておらず、どの書道団体にも所属していなかった。夫も書道の専門教育を受けていなかった。

親や生徒は、先生たちが指導免許が無いと知ったらどう感じるだろうか?

妻がお手本を書き、お手本は生徒ひとりに一部は与えられず、数枚を沢山の生徒で使い回していたので、いつも破れていたそうだ。

(お手本の使いまわしというこの認識が、書道を専門に学んでいないことの証拠だ。当教室は生徒に一枚ずつ与えられる。生徒も私も指導の注意をお手本に書き込んだりしている。使い回すなど以ての外だ。)

 

また、この教室は段級位に関して、自分たちが作った「オリジナルの級段位」と称するものを与えていた。

(親たちに、あたかも書道団体所属を匂わすかのようなインチキなやり方だ)

日本人はどこかカタカナ英語に弱い。

”オリジナル”という言葉に、「オリジナルとはどういう意味なのですか?」と、質問しない親達にも問題があったかも知れない。

(言われたことをそのまま信じるのは、危険だ!!)

当然、その段級位はどこにも通用しない、自己本位のものだった。

自分達で段級位を作り、自分達が検定して、自分達が賞状を作る。

日本でこのようないい加減なことを行っていたら、教室としての信用失墜だ。

海外だから、しかも、他に書道を教えていなかったので、こんないい加減なことがまかり通っていたのだ。

 

後日、私の教室へこの教室に所属していた生徒が入会して、生徒の段級位とお手本の詳細について尋ねたく、指導者の夫に数回面会したことがあるが、その説明は何一つ埒(らち)が明かないもので閉口した。

その時に私が色々質問したので、上記段級位のカラクリが明らかになったのだ。

5年以上、いやもっと長い時間、生徒と親に対していい加減な書道教室を運営してきた罪は大きい。

 

彼は書道を志すものならだれでも知っているはずの、唐の三大書道家達の名前すら知らず、書道指導者としてのあまりの無知さ加減とコンプライアンスの低さに失望した・・・・。

(例えば、イエス・キリストに何人の弟子がいたのかレベルの質問だ)

 

この教室は常時100名以上の生徒を抱え、常に50000元前後の収入があっただろう。

アシスタントの人件費や諸々の経費を差し引いても、税率は20%の領域の収入だろう。

当時の元レートは20元という時もあった。

彼らは不法就労者として、粗利としても100万円近くの収入があった。、

 

後にこの教室には公安の取り調べが入り、教室は一時停止となったと聞いた。

生徒とその親には、教室停止の理由を、ご近所から「騒音のクレームがあった」と偽りを伝え表向き数か月休んだが、その後教室を再開した。(どこまで悪なのだろう・・・・)

しかし、生徒数の減少と当時マンションの家賃が高騰し、収支が折り合わなくなったということを夫から聞いた。程なくして教室は無くなった。

 

 

二つ目は、駐在員妻が自宅の天山河畔花園で数年間(夫の駐在期間中)教室を運営していた。

70名前後の生徒を指導していたと、本人から聞いた。

駐在員妻はほとんどの場合、家族滞在のビザを持ち、夫の会社から就労を禁止されている。

家族滞在ビザでの就労は入管法的にも違法だ。雇っている夫の会社も罰金刑が科される。

また、配偶者補助や駐在員手当を支給している夫の会社へも背信行為だ。

 

70名前後を教えたなら、当時月謝が400元程度として、一か月28000元の収入がある。当時の元レートが18元だとして毎月50万円前後の収入になる。当然彼女は納税もせず、事業をする上で毎月義務とされる会計報告の為に会計士費用も掛かってはおらず、自宅を教場としていたので、経費もほとんどかからない。駐在員は会社が住まいを提供するのが基本だ。50万円前後が毎月彼女のポケットマネーになる。

*因みに、中国では、28000元の所得収入の税率は25%。基礎控除4800元として、諸々計算すると約5000元前後の納税額となる。

もちろん脱税。

 

彼女は「日本書写書道検定委員会」の教室として本部に登録し教室運営していたが、この団体の教授資格を持っていなかったということを、この団体の責任者から聞いた。

彼女の教えた生徒が当教室へ来ることになり、生徒の段級位についての問い合わせと別件で面会を約束したが、当日ドタキャンされて私の電話は着信拒否となり、私は彼女と連絡が取れないまま、彼女は程なくして日本へ帰って行った。

結局、夫の駐在期間の数年間、違法就労を続け、納税義務も果たさない。

また、生徒の親達に日本書写書道検定委員会の指導資格なしに指導を行っていたことを隠していた。

何とコンプライアンス意識が低いのだろう・・・・。

 

彼女の残された生徒の大部分は、別の駐在員妻が引き受けることになった。

 

 

 

三つ目は、上記の駐在員妻の生徒を引き受けた駐在員妻が、仁恒河濱花園の自宅で教室を運営していた。

彼女も日本書写書道検定委員会の教室として本部に登録していた。

彼女は自分の教室を開く前に、当教室へ体験に来たことがあった。

(何と、当教室をちゃっかり偵察に来たのだったのだ・・・・。)

私は当時の事をはっきり覚えている。

午後からの講座で、私が昼食から戻り、教室に入ろうとしたら、誰も居ない教室に入室許可もされていないのに何食わぬ顔で座っていたのだ。

正直、私はちょっとその厚かましさに驚いた記憶がある。。

もし、どこかのお宅へ伺い、ドアが開いていたからといって、リビングのソファーに座って家人が帰って来るのを待つだろうか?

せいぜい、家人がお留守だとわかったなら、玄関の外で待っているのではなかろうか・・・・。

 

彼女に対する驚きはそれだけではなかった。

体験申込書に書かれていた彼女の携帯番号も偽りだった。(後日私が電話を入れたところ別人が出た。私はまんまと騙されたのだった)

どうりで最初から入会の意志等ないのか、彼女の体験中のお稽古の態度が、とても横柄だったことを今でも記憶している。

更に、最後に「さようなら」の挨拶の言葉も後ろを振り向いたままで、私の顔を見ることもなかった。

(私は、内心この方の入会はお断りしようと思ったものだった)

あの時のシーンのやり取りは、今でもはっきり覚えている。

彼女の顔も着ていた洋服も・・・・。

 

彼女も自宅を教室としいた。

親は毎回彼女の家には行かない。

行かないので、どのように教えているのか見ることはない。

後日、私の教室に来た生徒はこの教室での様子を語っていた。

彼女はキッチンで料理をしながら指導していたそうだ。

ある子どもは、「ピーマンを焼いている匂いがした。」と、当時のお稽古の様子を語っていた。

また、ある子どもは、「今日の先生のパンティーの色はピンク。みんなは何色?」と、聞いてきたそうだ。

子どもはその質問をされて「嫌だった」と言った。

(書道のお稽古中にこの質問とは、質問の下品さにあきれる。)

(小学生に対して、この質問をするのは、立派なセクハラだ。)

 

彼女も夫の駐在期間が終わり本帰国していった。

後日、彼女の生徒数人が当教室へ移動して来た。

やはりこの生徒達の段級位の事で、「日本書写書道検定委員会」へ問い合わせた。そしてこの時も責任者から、彼女がこの団体の教授資格がないにも拘らず、指導者と名乗っていたことが分かった。

生徒の親に対して裏切り行為だ。

 

<総括>

不法就労の指導者の共通点は正直さに欠けるところだと思う。

正直さに欠けるから、何かをごまかしたり隠したり、不法就労も平気で出来るのだろう・・・。

 

また、彼らの共通点は、最後まで生徒達の責任を取らない。 

3つ目の指導者には、引き継いだ生徒の事で尋ねたいことがあったので、その件で彼女に質問したかった。

その為私は、団体の責任者へ彼女の連絡先を聞いたが、個人情報という事で教えては貰えなかった。それで私は自分の連絡先を彼女に伝えていただくようお願いして連絡を待った。しかし、彼女からの連絡は一切無かった。

自分が教えた生徒への質問にも答えようとしないのは、生徒への想いが欠けているように感じる。

指導者として、無責任に感じた。

 

駐在員妻はいつか日本へ帰る。残されるのは中途半端に教えられた生徒達だ。

そして、結局その生徒達を私が指導することになる。

しかも当然教えられているべき基本運筆が十分教えられていないことが上記3教室の特徴だ。

変な癖がついて、基本運筆が十分に教えられていない。

一番の損害を受けているのは生徒達だ!!

彼らの指導者としての怠慢に憤りを感じる・・・・。

自分はやりたい放題。そして生徒達をきちんと教えていない。

生徒の成長や進歩より、自分の利得が優先だ。

そんな心構えで生徒の書道教育なんて行ってほしくない!!

 

結局、その人の生き方は、書道の学び方や引いては仕事ぶりに現れるのだ。

書道の運筆は、基本に忠実に。

手を抜かず、ごまかさず一歩一歩努力しなければならない、

物事のルールを守れないような人は、基本運筆も蔑(ないがし)ろにするだろうし、忍耐強い努力も端折(はしょ)ってしまうのだろう・・・・。

「小さなことに不実な人は、大きなことにも不実なのだ」・・・。

 

全ての不法就労指導者が居なくなり、すっきりした中で上海で書道教室を運営出来ると思っていたが、昨日ある親からメールをいただいた。

各家庭を回って書道を教えている、指導者がもう一人いるのだそうだ。

 

2019年当時に噂をを聞いた覚えがあるが、当時はあまり気にしていなかった・・・・。

ただ、この指導者が不法就労指導者なのか、就労ビザ(多分別の仕事で取得したビザ)持ちの指導者かは、今のところ分からない。

 

この指導者と当教室の違いは、以下の通り。

 

1,履歴書に書ける権威ある段級位の検定が毎月あり、お稽古した作品を日本へ送り検定を受け、進歩が目に見える。

(この指導者は、段級位というシステムは無いということだ)

 

2,毎週の毎回お稽古で。硬筆と毛筆の両方のお稽古を行う。

(他方、この指導者は、月2回毛筆、月1回硬筆しかお稽古しない)

 

「良い木は良い実を結ぶ」ように、良い指導者は良い生徒をつくる!!

益々、自己の書道指導等の知識を増し加える努力と、日々の稽古に精進し、書道指導者としてのレベル向上に努めようと決意を固めたのであった。

 

一難去って、また一難。

2021年も相変わらず、気が抜けないようだ!!