書家・安東聖空先生(仮名書道)の書論を読んでいます。
「かな古筆美の研究 第七巻 総論『ほんとうのかな』」
非常に響きます。
先生の言葉を、ところどころ抜粋します。
【立派な字を書くために】
立派な字を書こうと思ったら、自分が立派にならなければなりません。
自分を立派にするためには、一言一投足といえども粗末にしないように、自分を傷つけるような言行は一切やらないと思うようになったのです。
【手本の選び方】
私は良い手本、立派な手本、しかもその立派な手本を書かれた先生の人柄、こういうものを第一の条件にいたしまして、手本を探し求めたわけであります。
【手習いからの発展】
手本の真似だけをすること、これほど価値のないものはありません。こうしたら文字の良いのが書けるという法則を学んでいるのです。手本を見て習うときには、その法則を会得することです。
それを使いこなして初めて書道は成立する。
真似をしていた習字が、今度は創造の世界に入っていくということにならなければ、本筋ではありません。
以上が、抜粋。
手本を真似して書く段階から、創作の段階に入るには、手本を真似して書く段階のときから法則を学ぶ必要がありますが、法則を見出し、理解して応用するのは時間がかかるかと思います。
仮名書道では、手本があれば書けるところまで進めても、そこから先に進むのは容易ではないという印象です。
私は仮名書道で今苦労しているのが、仮名に調和する漢字です。
自分の場合書写的な字に寄ってしまいがちです。
「またペン字みたいな字を書いている」
とよく言われたものですが……
手本の字を見るときに、ここにどういう法則が働いて、このような造形になっているのか、という目線で改めて見てみようと思いました。
通信の生徒さんの中にも、仮名書道の漢字に苦労しているという方がいらっしゃいますが、ここはやはり一つの難関にあたるのではないかと思います。
安東聖空先生の本には、
「和様漢字と上代かなをうまく調和させていくことが、我々の責任」と書かれています。「それ以外に脱線するな」と。
和様漢字の源は、小野道風。
「元永本古今集」を探らなければ本当の調和体の漢字は分からないといっていいと、安東聖空先生。
このあたりのアドバイスを、どう見るかは人それぞれかもしれませんが、私は、小野道風、藤原行成、藤原定実……
このあたりが好きでうろうろしていますので、先生のアドバイスは自分の中に入ってきやすいです。
安東聖空先生の著書は、メルカリや「日本の古本屋」というサイトで手に入るかもしれません。
興味があれば検索してみてください。
「日本の古本屋」は、すごく古いのが届くことがあるので注意が必要ですが、私はたまに利用しています。