(お知らせ)
~「お父さん」が ザ・伝道に掲載されました~
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お父さんNo58
互いに愛せよ
さもなくば滅びあるのみ・・・・・
(オーディンの詩より)
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「 もっと おはぎ食わせろっっ!! 」
「アカン! アンタこの間も
おはぎ食べ過ぎて 夜中胃が痛くなって大騒ぎやったやろ!
施設の人言うてはったんやで!
もう 2個までにしとき!! 」
「 お前は親の言うことと
施設の人の言うことと
どっちを聞くんじゃ!! 」
「施設の人に
決まってるでしょーが!!世の中アンタ中心に
回ってるじゃないんよっ!」
キラリと父は
毎回こんなやりとりではじまります
キラリは父と名古屋にいる兄と3人家族です
母はキラリが4歳の時に病死しました
母の記憶は断面的にはあるのは
ありますが
まぁ ほとんどありません
母が亡くなってから
父が一人でまだ幼いキラリ達を
育ててくれたことを人に話すと
それはそれは美談で・・・・
昔はそれをキラリはとても
ムカついていましたが
今になってみると
本当にそうだったのかもしれないと
普通に最近は思える自分がいて
気がつけば
父に感謝できていたり・・・・・・・
季節は木の葉が色づきはじめ 父が住んでる施設は
黄色い銀杏の木に多い尽くされていて
父の部屋から見える庭には
落ち葉が山盛りになっていました
もうすぐ冬がきます
この頃の父はもう
一日を介護ベッドの上で過ごすようになっていて
父の体には再びカテーテルが挿入され
尿を吸出し 介護ベットの足元においた袋に流し込んでいます
体の中の管につながった老廃物が赤茶色になって
いつも介護ベッドの下の袋に溜まっていて
それを トイレに流してキレイにするのが
キラリの毎日の日課になっていました
以前は
身の置き場に困るような吐き気を催しそうだった
汚物の処理も
今では日常茶飯事のことと
まったく平気になっていましたし
便器を使ったあとの漂う臭気もそうで
キラリの中では普通にそれを受け入れ
なんでもないことになっていました
この頃から父はよく
足の位置を動かして欲しいとか
頭の上の電気のリモコンを取って欲しいとか
たびたびキラリに頼むようになっていました
もうそんなことも
自力でできなくなっていたのです・・・・・
咳をし それがゼロゼロになり
口元にティッシュを持っていくとそこに 「プッ」と 痰を吐く父は目を閉じて
何かひそかな痛みが過ぎるのを待っているような様子で・・・・
ようやく口を開きます
「昨日 夢にお母さんが来てたわ~・・・ 」
「はい はい 」
と答えます
洗濯してキレイになった介護用エプロンを父の
首にまいて 食事をさせます
「 あ~~~~ん 」
パカっと父がキラリの手のひらに入れ歯を吐き出します
食べ物のカスだらけの
入れ歯をハブラシで丁寧に洗い
また使えるように 専用液に漬け洗浄します
着替え 汚物の処理
これらの作業もずいぶん手馴れたものになりました
不思議に寝たきりでも髪の毛や
髭・眉毛・鼻毛 耳毛まで生えます
今日はバリカンを持ってきたので
綺麗に刈り上げた頃にはずいぶん父もすっきりしました
寝たきりとはいっても
ちゃんと父の細胞は生きているのです
「寝たきりやからといっても 毎日 顔洗って
口もゆすいで お風呂もキッチリ入るんよ!
朝はキチンと時間通りに起きて
夜は暗くなったら寝るの!
体は動かなくても
規則正しい生活をして 人間らしく生きるの!
動物とちがうんやから!! 」
「へぇ~~~へぇ~~~
口うるさいのお~~~ 」
そして 父が咳をします
父の咳の発作は 周囲がぞっとするほどのものになっていて
一度の咳が一時間も続き
父自身にも止められるかどうかわからない
恐ろしいものになっていました
「 ゴホッ ・・ゴボッ・・・
もっと・・・ 強くたたいて 」
ゴホンっ ゴホンっ
父の肺の中に溜った
痰が切れないのです
キラリは父の背中をバシバシ叩きます
「 もっと強く・・・ 」
もう一発
さらに 少し下も力を込めて二発
必死で叩きます
この痰を切ってやらないと
父は呼吸ができなくて死んでしまいます
「誰にとがめられることなく
アンタをバシバシ叩けるのっていいな 」
とキラリが冗談をとばすと
父は笑います
バシンっ さらにもう一発
苦しいのでしょう
父の目から涙がこぼれます
父は頭をぴっちり枕に押し付け 口と鼻に空気を吸い込もうと
大きく息をします
小さい頃キラリは本当に父が恐怖の対象でした
お話を聞かせて寝かしつけてくれたこともない
「おまえは偉いね」 と褒めてくれた事もない
いつしかキラリは自分に子供ができたら
こういうことをきっとしてやろうと
心に誓っていました
そして何年か後に
そのとおりになりました
たくさん抱いて キスしてしゃべって
笑って すべてキラリが母親からも父親からも
与えられず寂しく思ったことでした
小さい頃に見上げていた大きな父の背中は
今はこんなにも小さくしなびれて
子供のようです
父の手や足には
骨を取り巻く ダランとした
皮のような肉がついているだけでした
父の背中を叩きながら このまま咳が止まらず
死んでしまうのではないかと何度も思ったことがありました
しかし 数10分すると
「 フシューーーーー 」
と父が大きく呼吸し始めます
痰が切れて肺の中を流れていってしまったのでしょう
もう安心です
父はゆっくり横向きになって 背中を丸めます
父は死へと向かうこの肉体を自覚し
残り少ない呼吸を数えているようで
その光景をキラリは見つめます
起こっていることをありのまま平和な気持ちで受け入れます
6畳一間に介護ベットに簡易トイレ
それ以外には何もなく地位も名誉も財産も・・・・
父の横には正心法語だけ・・・・
しかし 父の精神は
父の肉体が朽ちるにつれ
人格は一段と輝きを増しているように見えました
キラリは父の身の回りをキチンと片付け
枕もとに喉が渇いても自分で飲めるように
ストローのついたペットボトルの水を置いてやります
キラリがいない時に
ヘルパーさんにお買い物に行って
もらってもいいように
小銭入れに手紙とお金を入れておきます
「 あっそうや お父さん!
今週末お兄ちゃんが来るって・・・ 」
振り向くと
おおきな寝息を立てて父が眠っています
「 寝てばっかり・・・・・・ 」
寝て・・・・・食べて・・・・・排泄して・・・・
また 食べて・・・・
まるで赤ンぼうのようです・・・・
でも 人はこうして産まれた
時の状態に帰っていくのかもしれません
父を起こさないように
キラリはドアを閉めました
痰が切れるように
市販の 「龍角散」はどうかな?
それと暖房効きすぎてて
肌カサカサになってるな・・・
明日加湿器と保湿クリーム買いにいって
それから
それから・・・・・
頭の中で次に来たときに
父にしてやれることを考えます
調子の良い日と悪い日では
父にしてやれることは違います
「こうしてやりたい 」 と
自然と心の底から出てくるをやっているので
今では不満を覚えることはいっさいありません
愛とは・・・・・
常に絶えることなく 小さな感心を持つこと・・・・
こうしてあげたら楽になり
こう工夫してあげたら 喜ぶのではないかと
尽くすこと・・・・
☆.。.:*・°☆.。.:*・
それは ごく自然な感情で
そこには 何の見返りもなく
ただ ただ 愛するのが普通で・・・・
よくしてあげたいと
これからも 世話してあげたいと
やっと 心からそう思えるようになったのに
なのに どうして・・・・・・
プレアデスに祈願したのに・・・・・
安心しきっていたのに・・・・・・
まさか この日が最後の別れになるなんて・・・・・
次回いよいよ最終回です☆
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