彼女からの告白の代償は某高級ブランドの皿2枚。
実は食器はあまり詳しくないので知らなかったが、価値を知っている彼女はその皿が割れた時、ムンクになりながら何か叫んでいた。
が
それどころではない
今の彼女がさりげなく落とした爆弾に、見事命中してしまっていた。
「あ、敦賀さん、そこ破片が・・・危ない・・・・」
足を踏み出した蓮に、キョーコは慌てるが当の本人は全く構わずにキョーコの元へ行き、目線を合わせた。
呆然とした蓮の表情に、キョーコも流石にうろたえてしまう。
完全に勢いで言ってしまった・・・と思う。
マウイオムライス、もとい巨大な敵を攻略した達成感も合わさって、気が付いたら口に出ていた。
今更ながら、自分の発言に段々頬に熱が集まって来る。
今更ながら、自分の発言の意味を理解してしまう
今更ながら、自分の発言が恥ずかしくなってくる
「あ・・・あの・・・・」
「・・・・・・撤回しないから」
「へ?」
「聞かなかった事にも、空耳にも、誤魔化しにもしないから」
「あ、あの・・・・?」
真剣な顔で言われた意味が判らなくて、何の事だ・・と何か言葉を発しようとした瞬間、その身を強く引き寄せられた。
すっぽりと蓮の腕に収まり、ぎゅっと抱き締められる。
「つるがさ・・・」
「好きだよ」
一体この数日間で何度目の愛の告白になるのか・・・
それでも、言わずにはいられないほど、愛おしい想いが胸にあふれていた。
見返りを求めた訳ではないけど、嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
心に傷を負った彼女がこの言葉をくれるのに、どれだけの葛藤があったのか
あの日自分の告白に涙を流した彼女が、自分の想いに答えてくれた事が
「ありがとう・・・・」
更に強く腕に力を込められて、キョーコも恥ずかしさよりも切なさで涙が出そうになった。
「ありがとう」なんて・・・・自分の台詞だと思った。
自分を抱き締める力強さが、そのまま蓮の想いを現わしているようで、胸にじんわりと熱いものが広がっていった。
ああ
どうして自分は
こんな幸せな気持ちから逃げていたんだろう
例え、この先何があっても・・・・例え傷つく事や辛い事があっても、今のこの暖かさを覚えていればきっと大丈夫。
そんな事まで思えてしまって、ちゃんと覚えておこうと、蓮の背中におずおずと手をまわしていた。
忘れない
愛されたこの瞬間を
ちゃんと自分の宝箱に入れておこう
鍵はもうかけないで
いつでも取りに行こう
「最上さん・・・・」
うっとりと蓮の体温を感じてひたっていたが、ふいに名前を呼ばれて顔をあげた。
そこには真剣な蓮の顔があって、今更ながらこの整い過ぎるぐらいに整っている顔に見惚れてしまう。
ああ、この人が好き
今まで必死に抑えてきた想いが、すんなりと心に落ちてくる。
マウイオムライスはそんなものまで攻略してしまったのだろうか、なんて、ふと思う。
それとも敦賀さんの魔法だろうか
「俺の恋人になって欲しい。」
「・・・・・・・・はい」
「大事にするから」
「・・・・・・・・は・・・・・い」
先日も言われた言葉
涙で
上手く返事が出来なくて
泣き顔を見られたくなくて
つい俯いてしまって
そっと、敦賀さんが両手を頬に沿えて顔をあげてくれた。
合わさった目と目がゆっくり近付いてきて、伺うような敦賀さんの瞳に、そのまま唇に落ちてくるぬくもりに、そっと目を閉じた
一回
二回
三回
触れるだけの優しい口付に眩暈がくらくらしたけど、敦賀さんを受け入れたくて必死で理性を保った。
蓮は蓮で別の意味で必死に理性を保とうとしていたのだが、想像以上に甘いキョーコの唇に段々と夢中になっていく。
唇に
まぶたに
額に
頬に
鼻に
そしてまた唇に
顔じゅうに落とされるキスに、いろんな意味で意識が遠のいていく
「・・・・敦賀さん・・・・」
「・・・・・・嫌?」
「嫌じゃ・・・・ないです・・・」
真っ赤になりながらも息を吐くような呟きに、蓮は今度は深く口づけをしていった。
最初こそ、伺うように入っていった舌が、段々と熱を持って行く。
自分にしがみつくキョーコの指の強さが、益々気持ちを煽ってしまい、腕の中に強く閉じ込めながらもその唇を深く貪っていった。
自分がその手の事に疎いのは自覚している。
自分からはどうしていいのか判らないから、せめて受け入れたくて、今まで待たせてしまった分も受け入れたくて、キョーコは蓮にすがりつく。
「ん・・・・・ッハ・・・・ッ」
漏れ出る声が自分のものだと判らなかった。
与えられる刺激と、熱と、想いに溶けてしまいそうになる。
自分を抱き締めてしる蓮の手が別の意志を持って動いていくのをボンヤリとした意識で感じていた。
何度も自分の口内をおかしていた唇が離れて、酸素を求めて息をしていると首筋に生暖かい感触を感じて反射的に首をすくめていた。
「ひゃっ・・・・・!ん・・・ッ!」
キスマークの付け方も知らなかった自分だけど、流石にこの状況は判る。
・・・・・あくまで大まかな状況だが。
だから、自分の身体がゆっくりラグの上に押し倒されていくと我に返って慌てて声をかけた。
「あ、あの・・・・敦賀さん・・・・ッ!」
焦って自分を呼ぶ声に、潤んだ真っ赤な顔に、蓮も流石に調子に乗りすぎたか・・・と我に返った。
キョーコの告白が嬉しくて、想いを受け取ってくれた事が嬉しくて、口付けを受け入れてくれた事が嬉しくて、つい暴走してしまった。
自重しないと・・・警戒されたり、呆れられたり・・・・はたまた避けられたりしたら本末転倒だ。
自分はもっとストイックな方だと思っていたけど、キョーコの前では・・・本気で愛した女性の前では、余裕なんてなくなる事がよくわかった。
反省しながらも身を起こしつつ、「ごめん、つい・・・」と口に出そうとすると
本日二回目の爆弾が投下された
「あの・・・・・せめて寝室に・・・その・・・っ、は、初めて・・・なので・・・・」
真っ赤な顔で、潤んだ瞳で見上げてくる彼女の言葉は、蓮の心を撃ち抜くには十分過ぎるほどで
一瞬の無表情の後、ああ、もう誤魔化さなくていいんだった・・・と、思いっきりキョーコを抱き締めた。
「もう・・・・最上さん・・・・可愛すぎだよ」
「え?」
「あまり、俺を甘やかさない方がいいよ」
「え?え?」
「でも、俺としては甘やかしてくれた方がいいけど」
「え?あの、どっち・・・」
突然の蓮の行動に困惑するも、顔を上げた蓮が物凄い色気を醸し出しているのに、キョーコは固まった。
「・・・・・・・・愛している・・・・・」
この時の自分の台詞が、どれだけ迂闊なのかをキョーコがちゃんと学習するのは、もう少し先の話。
でも、今は・・・・・・・
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