不死蝶の女(ひと)【君と一緒に乾杯! 5】 | KIRAKIRA☆

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こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。


12月24日


グレイトフルパーティー



「「「「凛・ヒズリ様のおなーりー!!!!」」」」



何事も規格外の家族に囲まれて大抵の事では動じない自信があったが、ファンファーレと共に響く自分の名前に流石に呆気にとられた。





「だから言っただろ。絶対に独りでは来たくないって」


ユキちゃんの言葉に激しく同意した。


ちょっと用事があって先に会場入りしていた家族より少し後に来る事を、ユキちゃんは同情を含んだ目で見ていたのだ。

あの時は何だろう・・と思っていたけど


一体誰が考えたんだ。




会場を見まわすと、どこかで見たことある有名人から、一体どこの国の人だろうという人まで千差万別の人でにぎわっている。


そんな中で母さんを発見出来たのはラッキーだった。



しかも馬の骨と・・・あ、違った、誰か知らない男性と一緒話している。

いや、見た事あるな・・・芸能人かな


父さんと一緒じゃないのか?

妹たちもいないし、どこか行ったのか?

取り敢えず近付くと、母さんもこっちに気付いて名前を呼ばれた。


「凛!予定より早く終わったのね」


「あ、うん・・・・」


母さんの今日のドレスは、結局最後には父さんが選んだモノだ。

母さんを着飾らせる事を父さんは喜びとしているけど、あまり着飾らせ過ぎて馬の骨を量産するのも悩みの種らしく、こういう時は大抵傍を離れないのに・・・。


母さんの隣に立ちながら相手の男性を伺うと、相手も興味深そうにこっちを見ていて、なんとなくその視線にたじろいだ。


「おい・・・・この子は?どことなく敦賀蓮を思い出すんだが・・・・」


「息子の凛です」


「・・・・・・はじめまして」



自分の黒髪のせいで「久遠・ヒズリ」よりも「敦賀蓮」に似ているとよく言われるのは慣れている。

紹介されて頭を下げると、その男性は思いっきり口と目をあんぐりと開いていた。


「は?!お前・・・の息子!?・・・って事は久遠の息子か!?このデカイのが!?」



・・・・・・この場合、デカイって身長が・・・・じゃなくて年齢の事だよな?



確かに母さんの年齢から考えれば驚いても不思議じゃないし、少し童顔の母さんと並ぶと、父親譲りの老け顔の自分は姉弟でも通るかもしれない。

だけど、この場合知っている人は母さんが俺を身籠った時期が「いつ」だったか判るはずだ。

母さんが好奇の目で見られるのは許せなくて、思わず軽く相手を睨んでいた。


意外にも相手は関心したように見返してきた


「へえ・・・・確かにお前らにそっくりだな。しかし、撮りがいのありそうな被写体だな」


「ダメだよ、新開君。凛君は撮る方専門だから。それに、もう僕の弟子だしね」



男の言葉に聞き逃せない単語が出てきて、思わず聞き返そうとした所に第三者の声が聞こえて来て振り向いた。

そこには穏やかに微笑む、尊敬する人。

「緒方監督!」


「緒方監督、お久しぶりです」


「こんにちは凛君、京子さん。今日はお招きありがとう。久遠くんは一緒じゃないんですか?」


「ええ、娘達と一緒にチョコレートの滝の方へ行っています」



「おい緒方!撮る方ってどういう事だよ!」



会話を続ける母さんと緒方監督に、新開と呼ばれる男が割り込んでいったけど・・・


ん?新開・・・・?新開・・・・って・・・・あの新開監督!?



何度も彼の映画を見たし、父さんも昔何本か出演していた!

俺の尊敬する監督の一人だ


この人が・・・・・



「凛君は監督志望なんだ。子供の頃からハリウッドを間近で見ているからかな、繊細さと大胆さを合わせた作品を撮るんだ。センスもいいし将来有望だよ」



手放しで褒められる緒方監督の賞賛に頬が熱くなるのが判った。

仲間内で撮ったいくつかの作品を緒方監督に見てもらった事はあったけど、こんな風に言われるのは初めてだった。


まあ、結構辛口コメントもいっぱい頂いたしね。



「はあ~・・・・久遠と京子の息子がこんなにデカイのも驚いたが・・・監督ね~・・・・凛だっけ?年は?」


「18です」


「あ、意外と若いんだな」



・・・・・・・・・・・どっちだよ。というか、それ、複雑・・・・。



「もし興味があったら勉強に来いよ」



そう言って名刺をくれた。







父さんが戻ってきて、昔話に花が咲く大人たちを残して、俺は船をこぎだした妹達をホテルの部屋で寝かしつけた。

話の内容は面白かったから結構後ろ髪をひかれる気持ちだったけど。

なんせ、母さんと父さんの初の演技対決の話とか初耳だったし。


時計の針を見るともう23時をまわっていて、焦った。


ヤバイ!もうすぐ終わっちゃうじゃん!!



慌てて目的の人物を探す為に会場に戻ろうとした。



会場入りしてすぐ見つけたけど、周りに人だかりが出来ていたし、母さんが独りだったこともあって後回しにしてしまっていたけど・・・・・

本当はもっと早くに会いたかった。



「凛!」



そう彼女に・・・・って・・・あれ?



「マリアちゃん・・・?」



会場に向かう途中のロビーで立っていた彼女にビックリして足を停めた。

なんでここに。


ある意味今日の主役で、ホスト役の彼女が会場ではなくココにいる事に驚いた。

それに・・・・なんか、また怒っているように見えるんだけど・・・?


「どうしたの?なんでココに・・・」


「会場は今、おじい様のショーになっているから平気よ。お姉様もいるし・・・」


「そうなんだ・・・で、どうしてココに・・・?」



答えになっているようでなっていない説明に、もう一度同じ質問をすると、形のいい眉が思いっきり吊りあげられて、ギクリとした。


何か・・・地雷を踏んだ・・・?


全く心当たりがなくて、困惑してしまうけど・・・とにかく怒っている事は判る。

というか、ここ最近ずっと怒られているような・・・・ええっと・・いつからだっけ・・・



「・・・・・ええと・・・でも、ちょうどよかったよ!プレゼント渡したくて探していたんだ」


誤魔化す訳ではないけど、当初の目的を果たそうと慌ててポケットを漁ってソレを彼女の前に差しだした。



赤と緑の宝石であしらったブレスレットを入れた袋を掌に乗せる



「・・・・・・え・・・・」


「クリスマスカラーにしてみたんだ。デザインもマリアちゃんの好きな系統にしてみたんだけど、どうかな・・・」


「凛が作ったの?!」



驚くマリアちゃんに、少し照れくさくなって頷いた。

母さんや双子に付き合ってこの手の細かいアクセサリーも昔からよく作っていた。

使った宝石は今回のバイト代で買ったものだ。


そう言うと、マリアちゃんはすっごく複雑そうな表情になって・・・流石に不安になった。


「え・・・・っと・・・気に入らなかった?」


「・・・・・・・もう、何なのよ・・・・」


「え?」



キッとにらんでくる表情にますます困惑してしまう。



「突然あんな事言ったと思ったら、その後全く音沙汰なしだったし、かと思えばこっちが絶句するような台詞を平気で連発するし、挙句の果てにはこんな・・・プレゼント・・・ちゃっかり用意しているし・・・ッ!」


「・・・・・・え~・・・っと・・マリアちゃん?」


「アンタ本当に私の事が好きな訳!?」



突然のマシンガントークによくわからないけど、最後の質問だけ否定したくなかったからしっかりと頷いた。


「じゃあ、何よ、どうしたいのよ!?私にいつまで待たせる気なのよ!?」


「へ?」




少し目に涙をためて詰め寄ってくる剣幕に、頭を殴られたような衝撃を受けた。




ずっと抱えていた疑問が・・・・・解ける気がした。