【1万HITリクエストフリー】たとえ世界がひっくり返っても【1】 | KIRAKIRA☆

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こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。



ワタクシ、最上キョーコはここ1週間程、ずうっとイライラが止まらない



別に「女の子の日」では無いし、寝不足・・・は少しあるかもしれないけど・・昔バイト三昧だった頃に比べたらこれぐらいどうって事は無い・・・・


カルシウム不足かしら・・・と思って、朝昼晩牛乳を飲んで小魚チップを食べ続けてみても一向に改善されない。



どうしたのかな



ああ、本当に



困った事に特にイライラが酷くなるのが、仕事中なのよ




本来であれば、とっても楽しみにしていた映画の仕事




尊敬する大先輩・・・・敦賀さんとの映画の共演の仕事なのに、私はちっとも集中出来ていないどころか、イライラが募るばかり



ああ、本当に嫌になる



そして、今日も症状は悪化していく





「違うって、少し投げる時に右にそれるクセがあるんだよ。意識して左に寄せるぐらいでちょうどいいよ・・・・ほら、こう・・・・やってみて」


「こう・・か?・・・・・・・・ああ、本当だ、・・・・出来た」


的の中心部に綺麗に当たったナイフに、蓮の顔が明るくなった。

いつもは年齢よりも年上に見えるのに、この時ばかりは年相応な表情になっている


「な!でも、蓮は少しコツを教えると何でも出来てムカつくな~」

「いい生徒だろ?」


勝気に笑う蓮に、晶は「生意気ッ!」と不貞腐れて、蓮はその様子におかしくてたまらない、と笑いをかみ殺す。

そんな二人の様子は最近ではすっかり名物となってしまい、周りのスタッフは微笑ましく見守っていた。



「・・・・・・おはようございます」

「おはよう、京子ちゃん。今日も早いんだね。」

「ええ・・・・まあ・・・・」


近くにスタッフに声をかけながらスタジオ入りしたキョーコは、スタジオの隅にいる二人を極力視界の中に入れないようにした。

それでも聞こえてくる、楽しげな晶の声にやっと収まり始めていたイライラが募って来る。


学校でネチネチ嫌味を言ってくる同級生の声だってここまで癪に障らないのに、一体何だって言うんだろう。晶さんは別に何も自分にしていないのに・・・・




お正月映画の目玉として公開される映画に、蓮は主演として、京子はヒロインではないが、それ以上に重要な役所として出演することになった。


話を聞いた時は狂喜乱舞したのだが、その映画は超ド級のアクション映画だった。

近未来を舞台とした、警察とレジスタンスと政府の闘いを描いたもので、製作費も大幅投入・ワイヤーアクションたっぷり導入・カーアクション上等、それはもうハリウッド顔負けの本格的なものをつくろう!と・・・いう映画。


当然、「なんでも自分でこなす俳優」敦賀蓮は自分で数々のアクションをこなした。

キョーコの役柄も蓮の『相棒』役という事もあって、アクションシーン満載の役柄で、運動神経が決して悪くないキョーコもある程度はレッスンを受けて自分でこなしていった。

だが、免許をもっていないキョーコはカーアクションは出来ない。また、危険なスタントは事務所からNGが出ていた(この辺りはキョーコと蓮と事務所で散々もめて、最終的にキョーコが折れたのだが)。


その為、キョーコのスタントとして選ばれたのが晶だった。



初めて紹介された時は・・・正直少年かと思った。

ショートカットにタンクトップに黒いパンツ姿。

背格好はキョーコと同じぐらいだけど、鍛錬によって無駄な肉が付いていないし、かといって筋肉質と言う訳もない。

キョーコよりも2歳年上だというのに、少し童顔で化粧気は全くなく、言われなければまず女性だとは判らないだろう。

外見を裏切らず、性格も・・・かなりサバサバしていて男勝りだった。


そして、その身体のどこに・・・というぐらいアクションは超が付く一流の技術の持主。

その為キョーコのスタント以外にも、全体的なアクションの指導も他の人と一緒にしていた。



紹介された初日から晶さんは敦賀さんにとって、今までとは違う人だった。




「敦賀蓮です。よろしく」

「あ~、アンタが!何でも自分でやろうとするスタント泣かせな俳優か!」


社さん曰く「蓮の微笑みに頬を染めなかった貴重な人の一人」。

最初はいつも通りの当たり障りない態度で接していた蓮に対して、晶はズカズカと接してきた。


「アンタさ、シーン143のアクションも自分でやるのか?無茶だろ」

「大丈夫だよ。以前似たようなアクションやった事あるから」

「ジョーダン、二番煎じのアクションなんかやられたら、こっちがメ―ワク」


この言い方には流石の敦賀さんもカチンときたみたいだった。

何だかんだと負けず嫌いで、人一倍仕事に誇りを持っている敦賀さんには聞き逃せない台詞だったと想像できる。

たまたま会話が聞こえてきた私は、敦賀さんから発せられる不機嫌レーダが反応して青ざめた。


(この人・・命が惜しくないのかしら・・・)


「もちろん、そんなつもりはないよ。やるからにはその時に出来る最高のものにしてみせる」

「アンタが今出来る最高が、この状況で出来る最高とは限らないだろ」

「・・・・・そこまで言うのなら、見てもらおうか」

「ハッ・・・・上等だね・・・」


最後の方には大魔王を召喚する勢いの敦賀さんと、不敵に笑う晶さんの一騎打ちみたいな雰囲気で、場の雰囲気がトンデモなく凍りついていた。


(ああ、二人の周りにハリケーンが見えるわ・・・)



その後・・・・



何故かアクション対決が始まった二人は、いつの間にかすっかり意気投合していた。



「すごいな、その動きどうやったら出来るんだ?」

「視線を前じゃなくて、上の方にもっていくんだよ。腕で長さを目測して・・・」

「・・・・・こうか?」

「そうそう・・・ああ、足は、こっち。アンタ足長いな」

「君に比べればね」

「”君”~?やめてくれ。晶でいいよ。」



お互いの力量を認め合った二人は、さっきまでの険悪な雰囲気が嘘のようだった。

あまりの光景にハラハラ見守っていた私と社さんはポカンとしてしまう。



「前にもいたんだよ。プロ意識だか知らないけど、中途半端に何でも自分でやろうとして怪我して文句言ってきたヤツ。出来ない事をやらない、出来る人に任せるのを判断するのもプロだろ。その辺取り違えている奴が多くてムカついていたんだ」


晶さんは後になってそう言っていたけど、私はそれを聞いて恥ずかしくなった。

今回敦賀さんが全て自分でこなすから、私も!って張り合っちゃって、事務所に止められたけど・・・それってこういう事だったんだわ。


「蓮はいいよ。ちゃんと基礎が出来ている。一朝一夕で身に付けた動きじゃない。ちゃんと訓練した動きだ。決めつけてゴメンな」


「いや、俺こそプロの君たちに対して失礼だった。ごめん」





笑いあう二人に、何故かとても嫌なものを感じた



込み上げてくる焦燥感




敦賀さんの笑顔が似非紳士の笑顔じゃなくて



いつも見せている嘘くさい笑顔でもなくて



その他大勢に見せている笑顔でもなくて




神々しい本当の笑顔だったから






心のどこかで声がした






『アノ笑顔ハワタシノモノダッタノニ』







私はその声を必死で・・・聞こえないフリをした。















記念すべき1万ヒットなので、一応フリーに致します。

こんな感じではじまるものでよろしければ・・・・ですが。

さて、何話になりますか・・・