これは私の妄想物語



「RYU様  …
この方を覚えていらっしゃいますか?」


一体どのくらいぶりだろう。
按針が劉老人と一緒に
部屋へ入ってきた。



「按針か…久しぶりだな」


「劉さん、、わかるじゃないですか!」

劉老人は少しガッカリした顔をした。
「おかしいな〜 龍王様の事も
この間は曖昧だったのに。
…ああ!そうだ‼️
按針様はRYU様にとって
そんなに近い存在じゃないんだ!」


この部屋に入ると本人の記憶は
その本人にとって大切な人や
事柄から先に忘れていくと言う。


流石に按針はムッとした。

「なんですと?
私はこの方と肩を並べて
仕事に励んでいた。
この方にとって、私は右腕的存在ですよ。
私がいなければ
この方は書類がどこにあるかすら
分からないんだから。」

珍しく口を尖らせた。

「そうなのか?按針。
……
…そうだったな、、按針。」

RYUが笑うと按針は
ほっとしたような顔をした。



「そうですよ…貴方が仕事がやりやすいよう
私がどんなに心を配っていたか…
それを。。。なんでこんな事に」

按針がふっと顔を背けた。



「すまないね、、お前にも
苦労を掛けている。

ところで
…HARUはどうしている?」



「HARUさんですか?
HARUさんはきちんと
仕事をこなしていらっしゃいます。
先日、行方不明だった
ショーン様を魔王の元から無事救い出し、
Y氏のお孫さん宅へ
送り届けたそうですよ、えっと…
烈くんが。」



「烈か…
そうか……良かった。
ところで月朧と李麗は?」


「月朧は頑張ってますよ。
彼の持つESP(超感覚的知覚)能力も
かなり上がってますし。
面白い事に、
彼の性格なのか?彼の思念は
彼自身がフィルターを掛ける事が
出来るようなんですよ。」


按針がRYUの前に座り
腰を据えて話しだした。
その間劉老人は部屋の片付けをし始めた。

「フィルター?と言うと?」

「要はですね、、彼の思念は
他者に侵されないと言うことです。
龍王様は私達の思念を
何時でもリアルで聞けますが、何故か
月朧のだけは
時々良く分からないようです。
その時々が、
李麗やHARUさんと話す時。
盗み聞きされたくないと言うか。
内容はどうでもいい事らしいですけど。

彼の意思で、こことは繋いで
こことは繋がない!
と言う感じで龍王様のを
勝手にシャットアウトしてしまう  。
なので先日も、龍王様が
ちょっとイライラしましてね。
私にとばっちりが来ましたよ💦」



「そうか、、それは
面白い…」


月朧は一筋縄では行かないほど、
自分というものが強い子。
その性格の強さが
龍族になっても変わらず
見かけは従順ふうにみせていたが
やはり彼らしい対応の仕方だと
RYUは感心した。

面と向かって相手と
ぶつからなくなっただけでも
随分成長したものだ。


「李麗は?」


「李麗は龍王様のお気に入りでして。
ずっとお傍から離さない
まるでペットみたいな扱いです。
ちょっとでも姿が見えないと
『リーリーは?リーリーは
何処へ行った?』と大騒ぎ。
最近では李麗が嫌がって、
あんまりしつこく弄ると
泣きだす始末。」


泣く?あの我慢強い子が…

按針は続けて
「その泣き声が尋常じゃないんです。
最初は小さく、だんだん大きな声に変わって
そうすると耳が痛くなる😅
龍王様は人一倍耳がおよろしいので
それは堪らない雑音らしいのですよ。

まぁ、李麗が泣くのも
理由があるンですけどね。」


RYUは少し考えて
「HARU…かな?」

「そうです!HARUさんに
長く会えないものだから
かなり神経質になってるようですね」





可哀想に……
いくら龍族になったからといって、
性格が完全に変わる訳では無い。
まだ五歳の小さな子だ。
父母とも別れ、
大好きな叔父とも一緒に居られない。
まして頼みの綱の従兄弟とも
引き離されたら
不安が募るのは当たり前の事だ。
せめて自分がそばに居てやれたら…



「HARUに、たまに顔を見せるよう
伝えてくれ」

「わかりました。
ただ、、そうなると…」


「なんだ?」

按針が少し顔を曇らせたが
思い直すように。

「いえ、、。
では私はこれで。」


按針は立ち上がり、
ふっと思い出したように

RYUの耳元で囁くように
呟いた。


「あの方はお変わりありません。
ずっと待っていますと…
お伝え致しましたよ」


RYUの肩をそっと掴んで
彼は微笑んだ。





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