これは私の妄想物語。




-寛恕(カンジョ)とは
広く心が思いやりをもって許すこと。





なぁ〜、ロウよ!!

だから言ったじゃないか?
ここに残って男花魁になれば、
おまえは誰からもちやほやされる。
毎夜、色んな男に抱かれ、
骨の髄までトロトロと
しゃぶり尽くされるんだよ。
それがおまえの一番の幸せ。
寂しかねぇぞ!







女衒が下卑た笑みを浮かべる。




ぐっしょりと寝汗をかいて
目が覚める。

鬱々と微熱の続く身体は
夢と現実が交差する。









「先生…ヤン様」


気がつくと
執事が私の枕元に立っていた。


「大丈夫ですか?
お加減がかなり…」


「…大丈夫です」

痛む身体で気づかれないよう
起き上がる。

「こんな時に申し訳ない。」
執事が私の耳のそばへ口を寄せて
早口で

「私とショーン様は
明日一番鶏の啼く夜明け前。
この館を出奔します。」

「……?」

「ヤン様もご一緒に…」



手短に説明致します。

執事はそう前置きをした。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

私の名前は、烈。
私も貴方と同じ、元は人間。
今は龍族で、
楊 春明という方の元、
彼の指示で動く兵士です。

私は麗しの国から人質として
蒼の森国へ差し出された
ショーン様を救出する為に
長い時間を掛けて
ようやくここへたどり着きました。


貴方をここへ呼んだのは『魔王』。

彼は全身に火傷の傷痕があり、
その皮膚の再生の為に
貴方を実験台にしたのです。
あなたはもう既に彼に会っています。
そう…
お察しの通り、李教授の肉体が
今は『魔王』の『仮の宿』。


この1年、私は『魔王』の目を欺くため
執事として働きながら
出奔の機会を狙っておりました。
明日がその『魔王』がこの館を留守にする
1年に1度の好機です。
それを逃せば
ショーン様は17歳となり、
『魔王の花嫁』として
身体を乗っ取られてしまいます。
そうなっては私でももう救えません。


この部屋のどこかに《開かずの扉》へ
通じる道があるのだが

それが探せないと
烈は言う。


……

熱の高い苦しいなか、
私は考える。

見えない扉。


……ひょっとしたら?


以前に膨大な書物で埋まった
この部屋の本棚から
1冊ずつ本を取り出していた時、
おかしな形で組み込まれた
そこに似つかわしくない
小さな詩集があった。


「ひょっとしたら……」

私は烈の肩を借りながら
その場所へ赴くのであった。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

小さな詩集はまるで
何かの鍵のように角を差し込まれている。

それを縦て他の本と並べ、
ぐっと力を込めて押し込んだ。

やはり…
楊家にも似たような隠し扉があった。





鈍い音がして、
本棚が開く。

そこには地下へと降りていく階段があり、
暗く長い通路が見えた。


本日もお立ち寄り
ありがとうございます