前ほどのスピードでは本読んでいないけれど、あいかわらず本は読んでます。

寝る時に本がないと寝れないのと、出張移動時の大事なお供。

 

最近読んで面白かった小説2冊ご紹介。

 

米澤 穂信さんの「Iの悲劇」。

表紙の雰囲気とタイトルから、何かとってもドロドロした予感がします。最初の入りは、「うわ、やっぱりドロドロ系?」と思わせるような書き方ですが、読み進めていくとすぐにどちらかというと明るい感じになっていきます。主人公のIターンプロジェクトを進める行政職員は、所属している部署と仕事内容に不満たらたらなものの、前向き真面目に仕事に取り組むし、相棒の女性職員もやる気がなさそうな感じだけれど、暗い人物でもなく。テンポ良く進んでいきます。

誰もいなくなった地域に移住者(Iターン者)を誘致して復活させよう。という目的のもと物語が進められていくので、興味が出て買った本。

ネタバレになるので内容書かないで置きますが、ドロドロ大きな深刻事件が起こるわけではないものの、連続して「事故」が起きていきます。この事故が事件なのかが重要なのですが、まちづくりやってる私としては、「だよねー」と事故、事件を起こした人側の考えに共感。

※共感しても事故も事件も起こしません。

 

 

 

相場英雄さんの「震える牛」。

NHK BSで相場英雄さん原作のドラマ「ガラパゴス」をチラ見して、いい感じで難しそう且つとっても面白そうだったので、この人の小説読んでみよう。とまず買ってみたのが「震える牛」。

結論から言うと、めちゃくちゃ面白かったです。よくある刑事ものだと言われればそうなんですが、数年前に起こった未解決の殺人事件を、特命として主人公の優秀な刑事が再度調べなおしていきます。初動捜査があまかったため強盗殺人だと思われていたけれど、大きな企業を巻き込んだ計画殺人だったことがわかっていきます。この小説の何が良かったかというと、これまた鯖江でまちづくりしている私には刺さるというか共感するくだりがいくつもあったこと。

バイパス沿いに見える全国チェーンの衣料品店や牛丼屋を指した。その先には紳士服や雑貨の大型店の毒々しい原色の看板が見えた。「新潟市内もそういうことになっているのか」「教授の鞄持ちで出張するけど、どこも一緒よ。街並みが残っているのは盛岡や会津若松くらい」・・・今、フロントガラス越しに見える景色は、全国どこも同じで、その街の表情をうかがい知ることはできない。・・・「いつも専門書を買っていた古町の大きな書店もなくなったばかりなの。バイパス沿いの大型店は便利だけど、私は嫌い。だって、街を壊しているもん」

(「震える牛」から一部抜粋)

街を壊していった大手企業(ショッピングモール)が街を壊しながら出店していくことでしか利益を得られないようになり、その結果起こった犯罪が震える牛での殺人事件。東京に住んでいる主人公だけれど、住んでいる地域の商店街には人情があり、会話がある。それを残していくにはどうしたらいいのか。という観点も描かれています。

なんでもかんでも残せばいい、守ればいい。ということでもないですし、そこで商売している人たちの努力が一番大事です。

でも、努力していくための仕掛けをしたり、街の未来をどうしていくかを考え計画を立てることは、政治家だったり行政がしないといけないと思います。そして任せるのではなく、市民も真剣に考えないといけません。まちの未来を考えた時に、ただ便利。ただ流行ってるから。と安易になんでもかんでも誘致していいのかどうか。そんなことも考えながら読み進めることができました。

 

 

 

たまたまほぼ同時進行で読み進めていた2冊が、まちづくりのことも絡んでいたのでいろいろ考えられて面白かったです。

誰もいなくなった町に移住者を誘致して、再度再生させることは必要なことなのか。雪が積もった時に、そこに除雪車を入れるとそれだけ税金がかかります。ゴミの回収に行くにも税金がかかります。政治家のパフォーマンスの一環で掲げられた町の再生に対して、逆らうことができず表面上は仕事しているけれども、実は。の行動をしていた公務員は正しいのか正しくないのか。

計画なく、目の前の便利さを求める市民の声を拾いショッピングモール等を誘致していくことも、政治家のパフォーマンスの一環かもしれません。果たしてそれが本当に町のためなのか。市民がこう言ってるからそうします。なんてことではなくて、街の未来を考え、しっかりといろんな数字と向き合いながら計画を立てる必要があると思います。それが鯖江もないなと。

 

と、私視点の感想ですが、どちらも物語としてもとても面白いのでお勧めです。

 

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