昼間はこんなにすごいことになる
なんて思っていなかったものだから
チヂミとビールにスパークリングワインまで
飲んでいた能天気夫婦です。
ところが夕方になるにつれて
雨の降りはずーっと同じくらいに
強く降っていて
目の前の一級河川「釈迦堂川」の
水位はどんどん増してくる。
ご主人を亡くされて
一人暮らしのお隣さんは
明るいうちに避難所へ行っちゃった。
私はもともと避難するつもりは無かったから
「私、避難しないので」
って言ってた。
だんだん姑がそわそわしだして
何度も外に様子を見に行ってる。
避難しようかどうしようか
迷っているらしい。
でも一人で行く勇気もないのよね。
そこで私はこう言い放っちゃった。
「自分の命を守るのは
自分しかいませんからね」
そうこうしているうちに
辺りが暗くなってきて
「一人じゃ行けない」
って言い出す始末。
結局、主人が送って行ったのよ。
「ま～ったく
一人じゃなんにもできないんだから」
なんて
心の中で思ってた。
主人はといえば
パソコンで釈迦堂川の水位を調べたり
台風が今どこにいるのか
そんなのばっかり調べてる。
なので言っちゃったわ。
「確かに情報収集も大事だけど
停電になる前に
お風呂に入るのも大事なんじゃない？」
主人も
「あ、そうか」
ってお風呂に入ったわ。
普通に晩ご飯食べて
私だけ晩酌しちゃった。
主人は心ここにあらずで
ご飯もさっさと済まして
2階から川の様子を見たりしていたわ。
私もすぐに寝るつもりはなくて
夜中の12時までは起きていようと
録画してあった映画を見ていたの。
12時を過ぎても
川の水位は増える一方。
そのうち釈迦堂川の
川向こうが越水したのが
こちらから見てもわかったの。
うちのすぐ目の前の堤防は
なみなみしていたけど
高さにまだ余裕があったから
川向うの人には申し訳ないけど
「向こうが溢れたんなら
こっちは大丈夫」
って思っちゃったのよね。
そんな自分勝手なことを考えている時に
うちの2軒隣の前の堤防が
少し低くなっていて
そこから水が溢れているのを
その時はまだ知らなかったのよ。
その頃には
すでにわが家は
陸の孤島になってたんだわ。
ただ陸の孤島といっても
わが家は家を建てる時に
盛り土をしてあるので
周りの道よりちょっぴり高いから
家まで水がくることは無いと思っていたの。
家の前の「須賀川」の堤防は
なぜか目の前のところに
段差があるのよね。
夜中の1時半くらいだったかしら
その低いところから
とうとう水が溢れ出してきたの。
主人の
「溢れたぞ！」
っていう声に外に出てみたら
ザーザーと音をたてて
水が流れ出てきて
まるで
源泉かけ流し状態だったわ。
つづく
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