昨年10月20日書きました「腕は短く使う(秋猴の身)」の第2弾です。
私の基本稽古での面打ちについて書いてみたいと思います(突きでも、胴でも有効なのですが長文になっちゃうので)。
まずは、腕を短く使っての大きく振りかぶった面打ち。
振りかぶりも振り下ろしも腕を短く使って振るのですが、両肘をなるべく体幹に近いところを通して振ります。
一般的には、剣先が大きな半円を描くように振りますから腕も伸ばす(伸びきることは戒められますが)ので、肘は体幹から遠く離れますが、そうはしないということです。
その際に、振りかぶった腕の筋力の電源を切るような感じで肘を畳んで落下させるように振り下ろします。つまり、腕と竹刀を重力落下させるわけです。
筋力で振り下ろすと、重さを支えながら振り下ろすことになりますので、折角の腕と竹刀の重さが消えてしまうからです。
で、肩、肘、前腕の順で落下してきて、肘が下り切ってから剣先が相手の面に到達する感じになります。当然、腕は短く使ってです。
肘が構えた位置近くまで下りてきたときに、剣先が相手の面に当たる感じ(あくまで感じ)。
そうしますと、手ごたえが一般的な打ちと全然違うのがお分かりになると思います。
バーンとかバコンという感じではなく、スパンと切れる感じ。剣先に乗った重さが、相手の体の中を頭頂部から股下まで通り抜けるような感覚です。
手の内に強い手ごたえがないのに切れ味抜群な感覚です。
この感覚をしっかり覚えたまま、次の面打ち。
次は、大きく振りかぶらないで肘だけ畳んで剣先を上げて(竹刀を立てて)打ちます。
もちろん、肩甲骨も手首も自然に連動して動くのですが、肘だけのイメージで打ちます。
この時の打った手ごたえは、大きく振りかぶった時と同じ手ごたえになるように稽古します。
次に、肩も、肘も動かさないで、手首だけで剣先を上げて(竹刀を立てて)振り下ろす面打ち。
構えた位置からほとんど左手が上がらないで打つ感じ(むしろ一瞬左手が構えた位置より少し下がる)。
もちろん、実際には肩甲骨も肘も連動しているのですが、手首だけのイメージで打ちます。
この時も打った手ごたえは、大きく振りかぶった時と同じ手ごたえになるように稽古します。
最後に、手の内の手ごたえを変えないようにして肩も肘も手首も協調して打つようにし、振りの大小にかかわらず自由自在に打てるように稽古しています。
大きく打っても小さく打っても、剣先に乗った重さ(腕、竹刀、身体が移動する運動エネルギー、遠心力、求心力、重力の総和)が、相手の体の中を頭頂部から股下まで通り抜けるような感覚を味わいます。
打った後、剣先があまり跳ね返ってこないで、剣先が相手の面の上に一瞬くっつている時間があるような感じになります(やろうとしない。結果としてそうなる)。
肘を落として打っているので、一般的な面打ちよりも、打った瞬間の剣先の位置と肘の位置の高低差が大きくなるんで、重さが相手の体の中を突き抜けるような感覚です。
(でも、案外打たれた方はガツンとした嫌な衝撃はないようです。ほんとうに突き抜けてるのかも)
ちなみに、この打ち方で餅つきをやると、石臼の底がドスンドスンと低い音を響かせ、太い杵がすぐ割れてしまいました。餅が木くずだらけになるのでやめておきましょう。鍬での畑作業にはいいかもしれませんが。
この腕を短く使った面は、力が要らないのに、重さがあるので、打ち落とし面でもすり上げ面でも効果的です。腕を短く使っているので、間合いが接近してもスパッと打てて重さもあるわけです。
前回の「腕は短く使う(秋猴の身)」にも書きましたが、自分の身を相手に寄せて打つ、相手の身を自分に寄せて打つという大切なことを味わうように稽古しています。
是非、吟味ください。
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