中段の構えの左手の位置については、「ヘソの前に握りこぶし1つ分を空ける」とよく指導されました。
「丹田の気を剣先に乗るように左こぶしをスッと前に出すんだ」なんていう指導もありました。
(剣先に気を乗せる? うーん、具体的なようで全く具体的ではなくSF的でもあります。剣先ばかりに心が偏ることにもなりますし・・・)
これらの言葉を聞いて当時の私は 、「左手拳をヘソから握りこぶし1つ分空けよう」と竹刀を構えて少し左手を前に出すものだと解釈しました。
でも、今の私は、そうは考えていません。
以前にも書きました「骨盤の頂点は鳩尾」であるようにして「骨盤やや前傾」の姿勢となりますと、両手で竹刀を持って自然に腕をぶら下げれば、左こぶしとヘソの間には隙間ができます。(別記事「腰を入れろ」の「腰」は、腰骨ではないをご参照ください)
この隙間は、骨盤の前傾度合で変わります。
骨盤が後傾してれば、その隙間はなくなりますし、骨盤の前傾が深ければ隙間はさらに広がります。
ちょうどいい骨盤前傾角度になれば、左手はヘソから握りこぶし一個分くらいの隙間が出来る感じになります。
もちろん、腕の長さの個人差や、骨盤から肩甲骨までの長さの個人差で、左手が降りてくる位置がヘソの真ん前になるとは限りません。
私はたまたまヘソの少し下(下丹田)あたりの前に左手がおさまります。
つまり、色んな教えは「そうするのではなく、そうなる」ということが大切です。
「左手を握りこぶし一個分前に出せ」と言われて「骨盤前傾の度合の事だな」なんて瞬時に解釈するのはほとんど絶望的ですよね。
でも、こういう事って結構あるのです。
「昔からそう言われているから」「先生の構えは左手の位置がそうだから」という感じでは、その根拠に気がつくことも絶望的になります。
そうではなく、「なぜそうなるのか」「なぜそういう教えなのか」を自分の身体で検証する必要があると感じています。
もちろん、そのためには教えを裏切った実験も必要なんですが先生の前ではやりにくいかもしれませんね。
私は指導者を置かない少人数の稽古会を自分で立ち上げて自分の身体で人体実験していますが、普段の生活の中でも公園での1人稽古でも色々と実験しています。
でも案外、稽古会以外での気づきの方が多いように思います。
稽古日誌もつけていますので、いわば実験データをとりためて正解に近づこうとする科学実験のようになっています。
ですから、失敗のデータが多ければ多いほど精度が上がっていく感じです。
色んな教えを知って単にそうするのではなく、「結果としてそうなる」と分かるまで楽しみましょう。
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