主人公は、ハーバード大学医科大学院卒で、IQ180の頭脳を持つ精神科医 弱井幸之助。東京新宿に、ちっぽけなクリニック「新宿ひだまりクリニック」を開業しています。本書では、そのクリニックに診察に訪れる患者さん(大人)の診断・治療内容、人に言えない悩み、私生活が明かされています。
うつ病
産後うつ
双極性障害
大人の発達障害
摂食障害
PTSD
境界性パーソナリティー障害
アルコール依存症
適応障害 など
文章で読むとおそらくはとてもきつく難しい内容が、コミックスという形だと読者にやんわりと伝えることができますね。イラストの柔らかいタッチとヨワイ先生のどこか間の抜けた穏やかな表情もハードルを下げて優しく教えてくれます。
ヨワイ先生は、「精神科医なんて病気が治ったら忘れてもらうくらいが丁度いいんですよ。」ととぼけてみせますが、一方で「僕と出会った人は1人も死なせない」という頑固な一面もあります。
先生自身と婚約者の過去については「7巻」で、少しだけ触れられていますが、先生の痛みをもっと知りたいと思いました。続巻に期待します。
「思い出とは 本当は『今』を生きるための強さを与えてくれるものですから」しかり「そうして どうすれば生々しい過去の傷をかさぶたに変えることができるのか 一緒に考えていきましょう。」しかり(「4巻」PTSDより)、素敵なことばが散りばめられています。いくつかをノートに書き留めました。
患者の「精神疾患」あるいは生きていく上での「個性」に伴走者がいてくれるのはありがたいですね。疲弊する家族のそばにヨワイ先生がいてくれたらどんなに心強いでしょう。この閉塞感のある時代に手を伸ばして読んでみたいコミックスです。