油と脂。どちらも「あぶら」と言いますが、この違いは何でしょうか。
油は「OIL」、常温で液体状のもの、多くは植物性のものを指し、脂は「FAT」、常温で固体のもの、動物性のあぶら、肉の間にかたまったあぶらを指します。油は「さんずい」、脂は「にくづき」であることから、使い分けがイメージできますね。油と脂の違いはそれぞれ液体になる温度、融点の違いがあります。
「あぶら」、すなわち脂質にも、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、といった種類があります。この分類によって、脂質の融点や性質が変わってくるのです。
動物脂には飽和脂肪酸が多く含まれます。飽和脂肪酸の融点は30℃以上となっており、常温では固体となります。それに対して、植物油には不飽和脂肪酸が多く含まれます。不飽和脂肪酸の融点は氷点下(0℃以下)となり、常温で液体となります。
植物油でもヤシ油(パーム油)は飽和脂肪酸の含有量が多く、産地の熱帯では液体、寒い時期には固体(融点27~50℃)になります。また、カカオ脂(カカオバター)のように常温で固体状(融点31~35℃)のものもあります。
人の平均体温は36.6℃です。そのため、飽和脂肪酸を多く含む脂、不飽和脂肪酸を多く含む油で、血中のコレステロールの挙動も変わります。
飽和脂肪酸は血中の中性脂肪、コレステロールを増やす。一過不飽和脂肪酸は血中のコレステロールを低下させる。また、多価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸と言い、人間の体内では合成できず食物から摂る必要がある脂質です。
コレステロールは悪いもの、というイメージがありがちですが、エネルギーの貯蓄や細胞膜の原料、胆汁の原料になるなど、人が生きていくうえで欠かせないものです。飽食の時代で脂質は摂りすぎに注意すべきものですが、同時に、必要な量を必要なバランスで摂るようにすべきものです。
2015年度の日本人の食事摂取基準では、脂質の目標範囲は1日の総摂取エネルギーの20~30%となっています。(炭水化物は50~65%)