自分のコイン収集は資産保全として金・銀・プラチナ地金の購入から始まっています。
そのため、金貨・銀貨、そして、プラチナ貨が対象です。
*プラチナ貨は1枚しか持っていませんが:初めて入手したプラチナ貨
しかし、何事にも例外はあります。
それが第一次世界大戦(1914〜1918年)敗戦国ドイツで発行された
Notgeld:ノートゲルトに分類されるコインです。
ノートゲルトとは中央銀行ではなく地方の銀行で発行された通貨、地域通貨とも言われます。
当時のドイツはハイパーインフレ下にあったため、額面が極めて高いという特徴があります。
Hidden Secrets of Money episode 2、自己流解説、その2
Hidden Secrets of Money episode 7、自己流解説
でも登場していますが、詳しい解説がなかったため、今回改めて紹介します。
Germany, 1923, 1 Billion Mark, 77g (Silver-plated Ni+Cu+Zn), 60mm, J-N28, NRI 93
表:プロイセン王国首相Heinrich Friedrich Karl vom Stein(在職1807〜1808年)
裏:Westfalenの紋章、額面1兆マルク(Billionは英語で10億、ドイツ語で1兆)
Westfalen:ヴェストファーレン州のLandesbankで発行された世界で最も額面が高い硬貨。
発行11,113枚と比較的少なく人気もあるため非貴金属の硬貨であるにもかかわらず高価です。
なお、Heinrich Friedrich Karlはプロイセンの近代化に努めた首相ですが
ナポレオン1世により失脚しました。
Germany, 1923, 50 Million Mark, 32.5g (Gold-plated Cu+Sn), 44mm, J-N23a, NRI 65
表:Heinrich Friedrich Karl vom Steinプロイセン王国首相(在職1807〜1808年)
裏:Westfalenの紋章、額面5000万マルク
同じくヴェストファーレン州のLandesbankで発行された記念硬貨で
https://en.numista.com/catalogue/pieces20935.htmlには
Gold-plated(金メッキ)とありますが、単に青銅としている記録もあります。
Germany, 1923, 100 Million Mark, 12.6g (Silver-plated Cu+Zn), 33mm, Funck641, NRI 92
表:炎 裏:鎖で繋がれハゲタカに肝臓を喰われるプロメテウス
*Cu:銅とSn:錫の合金が青銅であるのに対して、銅とZn:亜鉛の合金は真鍮(黄銅)
ヴェストファーレン州で発行されたのですが発行母体や発行枚数は不明です。
額面は1億マルクと先ほどの5000万マルク硬貨より高額面ですが
重量もサイズも小さくなっています。
なお、プロメテウスはギリシャ神話に登場する神ですが
天界から火を盗み人類に与えたためゼウスの怒りに触れ
生きながら肝臓をハゲタカに喰われる罰を受けることになりました。
ギリシャ神話は”火を与えられた人類は文明を築く一方で戦争を始めた”と語っています。
敗戦国ドイツの苦しみを表している貴重なコインです。
第一次世界大戦で敗北した後にハイパーインフレで苦しんだドイツの国民は
今でも、いざという時のために金貨・銀貨を保有するように心がけているそうです。