コインの贋作について解説する前に
問題の深刻さを物語る2つのケースを紹介したいと思います。
ケース1:スラブに入っている銀貨に磁石がついた!
このような衝撃的な報告がCoin Communityのforumでありました。
https://www.coincommunity.com/forum/topic.asp?TOPIC_ID=260473
全文英語ですが、自分が理解した範囲で紹介します。
このtopicはhandle name, reyzaguirr氏の次の質問から始まります。
「購入した1933年のペルー銀貨に磁石がつくけど、贋作だろうか?」
それに対し、ShadyDave氏が答えます。
「自分が持っているPCGSとNGCに鑑定された1933年のペルー銀貨は
両方ともネオジウム磁石にくっつくよ。」
磁石がスラブ越しについている写真も提供しています。
https://www.coincommunity.com/forum/topic.asp?TOPIC_ID=260473&whichpage=2
最終的にはswamperbob氏が付き合いのあった全てのコイン・ディーラーに尋ねた結果
磁石がつくペルー銀貨は贋作と結論します。
この記事を書くにあたりVerify NGC Certificationで写真のペルー銀貨を調べてみたところ
NOT GENUINEとなっていました。
https://www.ngccoin.com/certlookup/2667505-006/55/
ケース2:贋作から一転、317万ドルの1913 Liberty Head nickel, Walton specimen
アメリカのコインでnickelと言えば、5セント硬貨のことです。
https://en.wikipedia.org/wiki/1913_Liberty_Head_nickelによると
1913 Liberty Head nickelは極めて稀少、たった5枚しかないそうです。
そのうち、George O. Waltonが所有していたものがWalton specimenです。
彼の死後、1963年、遺族によりオークションに出品されたのですが
オークション主催者は”真作ではない”と鑑定して返却したそうです。
この時、遺族は廃棄することなく、実に、40年間も保管し
2003年、PCGSの専門家に再鑑定を依頼したところ真作とされました。
2013年、オークションに出品され落札価格317万ドル(おそらく手数料込み)。
その後、300〜400万ドルで転売されたそうです。
これらのケースは以下の深刻な問題点を示しています。
1)専門家の鑑定といえども絶対に正しいとは言えない。
2)贋作を真作と間違えて資金を無駄にすることもあれば
3)真作を贋作と間違えて貴重なコインを廃棄してしまう恐れもある。
贋作はコイン・コレクターにとって、いえ、コイン業界全体にとって最凶最悪の敵です!