資産保全とは資産の価値を保つ事と定義します。

具体的には価値がある実物を持つ事

紙幣はインフレにより紙切れ同然になることもありますが

そのような場合でも実物が有する価値の棄損は少ないからです

価値がある実物は種々ありますが、今回は、そのうち金・プラチナ・銀地金に限定

そのうち、どれが最も有望かを検討します。

 

まずは下記グラフを見てください。

徳力本店のインターネット上サイトにあった資料を参考に作成しました。

参照:https://www.tokuriki-kanda.co.jp/goldetc/market/past.php

 

金地金価格(売値、円/g)の各年における最大値・平均値・最小値

 

プラチナ地金価格

 

銀地金価格

 

 

プラチナ地金と銀地金の価格変動はピークの時期にずれはあるものの似ています。

年内最大値・最小値の差が大きくなる事があり、平均値は上がったり下がったりしています。

金地金では年内最大値・最小値の差は小さく、平均値は徐々に上がっています。

このデータを見ると金地金が資産保全に最も有望と言えそうです。

 

もちろん、上記は過去のデータに過ぎません、未来のことまではわかりません。

そこで、地金の価格がどのように決まるかを検討してみます。

地金の価格は市場で売る側買う側の間で決まります。

 

売る側=供給

すぐに思いつくのは鉱山、採掘された金・銀・プラチナが売られます。

鉱山から採掘するには費用がかかりますから採掘費用+利益で売ろうとします。

したがって、採掘費用近くが地金の底値と理論的にはなります。

但し、現実には単純な採掘費用を下回る価格で売られる事もあります。

例えば、プラチナはパラジウムを採掘する過程でも得ることができます。

パラジウムの販売が好調であればプラチナの総合的な採掘費用が減ります。

他に売る側として地金所有者がいます。

つまり、これまで売られた地金も買取により市場に還流してきます。

では、将来的に全ての金・銀・プラチナが鉱山から掘り出された場合を想定してみましょう。

地球上の総量が少ないほど稀少性が高いと言えます。

現時点で、この総量はプラチナ<金<<銀とされています。

稀少性で価格が決まるならプラチナ地金が最も高く、金地金が続き、大きく下回って銀地金です。

現に2015年頃まではそうでした。

しかし、2016年以降、金地金がプラチナ地金より高くなっています。

なぜか?・・・それは買う側の要因があるからです。

 

買う側=需要=用途

金の用途:資産保全、装飾、産業

プラチナの用途:産業、装飾、資産保全

銀の用途:産業、装飾、資産保全

価格変動と同様、プラチナと銀の用途は似ていて、産業用途が大きな割合を占めています。

その産業用途を比較してみましょう。

プラチナは主にディーゼルエンジンの有害物質を除去する触媒に

そして、銀は写真フィルムに使用されます。

排気ガスデータ偽装事件以後、ディーゼルエンジン自動車の販売が落ち込んでいます。

写真フィルムにいたってはデジタルにかわりつつあり、いずれ、なくなる事さえあるでしょう。

産業用途が落ち込んだ結果、プラチナ・銀地金の需要が低下し売値が落ち込んだというわけです。

プラチナ地金の価格が金地金より低くなった要因の一つです。

一方、金の産業用途ですが電子機器および医療で、これらは堅調に推移していますが

金の用途に占める割合は10%未満とされます。

次に装飾用途

日本でプラチナは装飾品材料として金と同様、あるいは、金以上に評価されていますが

世界的には金の方が評価されています。

つまり、プラチナより圧倒的に金の方が装飾に使用されています。

これは好みの問題でしょう。

最後は資産保全用途

金・銀・プラチナ地金は価値がある実物であり換金も比較的容易ですから。

最たる購入者は各国の中央銀行であり購入する地金は金であるため

資産保全用途で購入される地金は金が圧倒的に多くなっています。

資産保全が用途に占める割合も金では銀・プラチナと比べて大きくなっています。

なぜ、プラチナは金より稀少なのに資産保全用途が少ないのでしょうか?

これは歴史的経緯が原因でしょう。

金貨・銀貨と異なりプラチナ貨が広く長期的に流通していたことはありません。

プラチナは稀少すぎること、そして、融点が高く加工しにくいことから

通貨の材料としては適していなかったためでしょう。

更に、紙幣の裏付けとして金本位制(紙幣を金と交換する制度)はありましたが

プラチナ本位制はありませんでした。

 

以上から考えると、やはり、資産保全目的には金地金が最も有望となります。

特に紙幣が紙同然になるような経済的混乱状況下では金の資産保全用途が高まる一方

産業は停滞しプラチナ・銀の産業用途は少なくなるでしょうから。

しかし、下記のような懸念もあります。

中央銀行の金地金売却により金地金価格が下落する事がある。

かつての米国のように個人の金地金所有が禁じられる事がある。

金地金さえ持っていれば資産保全は絶対大丈夫というわけではないでしょう。

 

PS

どの地金を購入しても注意することがありました。

いつ・いくらで購入したかを示す計算書(業者によっては納品書)も保管しておくこと

これがないと売却した時の損益を算出できないため納税の要不要や額を決定できず

不利な扱いを受ける可能性があるからです。