こんにちは、語源大好き・きんぞうです。語源の講座の中で「単語の中に単語が隠れている」ことを実感して頂こうと思いボードに selfish (わがままな) と書き「何が隠れていますか」と問い掛けました。期待するものは「self が見える!」でしたが、受講生から頂いた答えは「fish が見える!」でした。今日は、そんな場面を思い出した言葉から。

突然現れた、デリス・キング!?

グローバル化が進む現代社会において、外来語的な言葉が使用されることは避けられないことですし、受け入れざるを得ないものだと思います。その一方で、広く知れ渡るまでは、日本語によるフォローがあるべきではないかとも思います。

 

先日、経済関係の番組で、ある”王様”の名前が登場しました。評論家のコメントの中に出てきた ”デリスキング” がそれです。

発言主旨をまとめた画面にも デリスキング(スとキの間の中点は、もちろん付いていませんでした) とだけ書かれていました。

 

ネットで調べると、 デリスキング  = de-risking  = リスクを少なくしながらも関係を維持していくこと(広く世に知れ渡ったのは 2023 年 3 月のフォンデアライエン欧州委員長の講演)とあり、決して、”デリス・キング”と区切って、王様の名前にしてはいけないことが分かりました。

 

今日は、その接頭辞 de- に焦点を当てます。

 

接頭辞 de- :離れて・下へ・完全に

クイズでいきましょう!英語にしてみてください。すべてde-から始まります。

 

基礎編:決心する(6文字)、設計する、程度、頼る、発達する
中級編:配達する、見捨てる、決心する(9文字)、詳細、探偵
上級編:悪化させる、荒廃させる、貪り食う、困窮している、崩御

 

早速、答えへ

基礎編:decide, design, degree, depend, develop
中級編:deliver, desert, determine, detail, detective
上級編:deteriorate, devastate, devour, destitute, demise

 

これらすべての語が、接頭辞 de- と語幹(+接尾辞)で出来ています。この de- を意識すると次のようなことができます。

 

良く知る単語の隣にいる難単語!?

またまた、クイズです。今度はペア編です。
後ろの単語は、すべて de- で始まります。

 

部分 ― 出発する
毒物 ― 解毒
匂い ― 防臭剤
観光旅行 ― 迂回路
絵画 ― 描写する
詐欺 ― 欺いて巻き上げる
規制 ― 規制緩和
世代 ― 退化

**************

増える ― 減る
登る ― 降りる
到着する ― 由来する
建設 ― 破壊
完結する ― 枯渇させる
発音する ― 公然と非難する
昇進 ― 降格
円高 ― 円安

 

 

part – depart
toxic – detox(-ication)
odor – deodorant
tour – detour
picture – depict
fraud – defraud
regulation – deregulation
generation - degeneration

**************

increase – decrease
ascend – descend
arrive – derive
construction – destruction
complete – deplete
pronounce – denounce
promotion – demotion
appreciation - depreciation

 

よく知る単語で語源を味わう!

語源を覗いてみようと思わる方であれば、どなたも decide をご存知です。そのよく知っている単語を使って、語源の知識を広げていくことはとても効率の良い方法です。

decide → de- + cide = 離す(off) + 切る(to cut)

迷うふたつの気持ちを、きっぱりと切り離して、どちらかに決める、そんな気持ちがこめられた単語でしょう。名詞形がdecision ですから、cis という綴りも仲間だと分かります。有名な仲間に、suicide, pesticide, precise, concise, scissors などがいます。

 

そこで、 接頭辞 de- :離れて・下へ・完全に に敬意を表して一句、

きっぱりと、切って離して、ディサイド

接頭辞 de- には、たくさんの意味がありますが、まずは「離れて、下へ、完全に」と覚えてみてください。re-, com-, in- などに比べてマニアックに見えるかも知れませんが、それは、"接頭辞de-を語る人"が少なかったからです。方向性を示すad- と共に、接頭辞 de- はお勧めの接頭辞です。

では、またお会いしましょう!

 

〔編集後記〕

1.接頭辞 de- を「離れて、下へ、完全に」にまとめる理由

辞書や語源の本を見ると、接頭辞 de- には10個近い意味が並んでいます。「英語にとって単語は道具」・「単語にとって語源は道具」と考えていますので、10個近い意味を覚えることに価値は見出していません。敢えて付け足すとすると「反…、非…」がありますが、これも元の状態から「離れる」と考えることができると考え、「離れて、下へ、完全に」の三つにまとめています。

2.接頭辞の中で、ad- や de- を先行させる理由

効果性の非常に高い接頭辞であるにもかかわらず、あまりにも知られていない現状があるためです。ad- は、 ac-, af-, ag-, al- など色々な変化をするため、慣れるまでは意識しにくい面がありますが、de- は変化がないため、発見が容易です。また、意味も、 「離れて、下へ、完全に」のどれかに当てはまるため、これも慣れるとすっきりと処理できる接頭辞です。de- で始まるよく知る単語から、始めてみられると有効です。