ワーグナー『ニュルンベルグのマイスタージンガー』の感想 大野和士指揮 新国立劇場 |   kinuzabuの日々・・・

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東京の新国立劇場でワーグナー作曲『ニュルンベルグのマイスタージンガー』を観てきた。2021年12月1日。

以下、配役表。



大野和士さんと都響の、東京、関西共同のオペラ祭りはコロナのため2年目のマイスタージンガーが1年延期になり、当初兵庫でも公演があるはずだったものが中止になった。1年延期でやろうと思ったら、東京文化会館も中止で、新国はどうなるか?という感じだったがなんとか公演できてよかった。

私にとっては久々のマイスタージンガーで、演出も期待できそうなので、1か月前にチケットを取った。問題は帰りの時間。日帰りだったので新幹線に間に合うか、それがちょっと心配だった。

 

でも、事前の期待通り、とても面白い舞台を楽しめた。


演出の大枠は、ポーグナーが中心となって親方たちで音楽祭を開催するというストーリーだと思った。

舞台上にはそれこそ舞台と客席があり、回り舞台で場面が変わっていく。客席に1幕の舞台準備では軽く背広を着た親方たち。3幕後半の本番では正装した親方たち。合唱団は裏方さんと舞台に出る人たち。ダーヴィッドは裏方をまとめているようだったな?

ザックスのオフィスには「Spieleplan(公演日程表)」が貼ってありそれにはポーグナーの紋章?があった。ザックスは芸術監督、ポーグナーは総裁かな?

そして3幕前半のワルターの歌を紡ぎだす場所は「PROBE***(リハーサル***)」で、これがお祭り本番の優勝の歌に繋がる。

そしてお祭りが音楽祭の本番。舞台いっぱいに使って、大きな木が下りてきて、華やかに進んだ。ザックスの歌もすばらしかった。

でも最後はエーファが親方の象徴であるワルターの肖像画を壊してワルターとともに去っていく。エーファの怒りはワルターと親方たちが和解しても消えない。そんな終わり方、かな?



歌手は、ザックス役のトーマス・ヨハネス・マイヤーがすばらしかった。高貴でつややかでほとばしる声。最後まで衰えることなく歌い切った。こんなザックスを聴けて本当によかった。

ワルター役のシュテファン・フィンケは声は出るけれど、重い声質はワルターに合わなかった気がする。ツイッターでフォローしている方が書いていらしたが「ジークフリートみたいなワルター」。

エーファ役の林正子さんは声も美しく、大きく響き、とてもすばらしかった。こんなすごい人がいたのね。

ポーグナー役のギド・イェンティンスはまあ普通かな。

ベックメッサ―役のアドリアン・エレートは役にあった声と見た目だった。大変良かった。

コートナー役の青山貴さんも張りのある強い声が大変印象に残った。さすが我らの青山さん。

ダーヴィッド役の伊藤達人さんとマグダレーネの山下牧子さんは安定した声で場を盛り上げた。


大野さんの指揮は、遅いの一言。まあ、いやになるわけではないのだが、帰りの時間が気になる私にはちょっとびくびくものだった。とはいえ、オケから美しい音を引き出していてとてもよかった。

都響のオケは本当に綺麗だった。迫力ももちろんあるけれど、音色の多彩さに目を瞠った。

合唱もとてもきれいだった。ソーシャルディスタンスを取るのが大変だっただろうなと思う。あの人数でもあの迫力だから、いっぱいの人で歌ったらすごい迫力だったんだろうな。


全体的に、演出にいろいろ仕掛けと動きがあって楽しかった。歌手もすばらしく、特にザックスのマイヤーに感激した。指揮もオケも合唱もすばらしい。もう最高やね。

3幕が一番長いけれど、印象的には一番短い。

東京まで遠征してよかった。新幹線も間に合ってそれもよかった。カーテンコールをゆっくり楽しめなかったのが残念だったけどね。