ワレリー・ゲルギエフ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の大阪公演に行ってきた。会場はフェスティバルホール。2020年11月6日。
何とか来日してくれたウィーンフィル。当初は予定になかったが、来日決定後にチケットを取った。結構余裕で残席があって、それはそれで申し訳ないなと思った。
4時過ぎにホールの横を通ったら、WPH3と書かれた団体バスがホールから出てくるところだった。こんな時間にホール入りかな。
今日の曲目は以下。
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲
チェロ独奏:堤剛
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番
ピアノ独奏:デニス・マツ―エフ
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
舞台上は密集していてソーシャルディスタンスは取られていない感じ。舞台上の団員と客席の間も近い。最近は前数列の客席に人を入れないことが多いが、それはなし。
また、オケの団員は舞台に入場するときはマスクをしていたが、演奏時にはマスクを取っていた。
あと、弦楽器の人数がなんかおかしい。数えると15-13-9-10-8。ヴィオラに何かあったのだろうか?
で、コンサートが始まった。
一曲目、ロココ風の主題による変奏曲。
ソリストの音色とオケが全くそりが合わず、ソリストの技量もオケに合わない。聴いていて退屈で、これ以上なく不満だらけ。私のウィーンフィルとの時間を返してほしい。
アンコールが一曲。
二曲目、プロフィエフ ピアノ協奏曲第2番。
マツーエフの大変美しいピアノが輝く。太いのにこんなにきれいな音を出すなんてすごい。しかも超絶技巧が続く。いや参った。オケも万全のサポート。丁々発止とはこのことか。
すばらしい演奏を聴けてうきうき。
アンコールが一曲。シベリウスのエチュード。
休憩後の三曲目は「悲愴」。
第一楽章は、たっぷりとした呼吸を取って時に音を止めてじっくり攻める。ものすごい集中力。ウィーンフィルの弦の音が輝く。この音を待っていたのだよ。
ほぼ休憩なしで、第二楽章、第三楽章といいテンポで続き、そして第四楽章。
これがものすごい集中力で極めて重い。祈るような、悼むような、真剣で辛辣なとてつもない演奏。緊張で心が震えた。
最後の音が消えて1分ぐらい沈黙が続きゲルギエフが体を緩めた時点で大拍手。会場全体でゲルギエフとウィーンフィルの思いを共有していたのかもしれない。
アンコールが一曲。チャイコフスキー「眠れる森の美女」よりパノラマ。
オケが引けたあとに、ゲルギエフを拍手で会場に呼び出して、コンサート終了。
凄い演奏会だった。マツーエフのプロコもすごかったが、なんといっても「悲愴」に尽きる。ウィーンフィルとゲルギエフの本気をまざまざと見せつけられた。ゲルギエフはオケから新しい音を引き出し、テンポを自在に操って、まるでチェリビダッケのように感じた。
ウィーンフィルも名人芸を見せつけてくれて、弦も極めて強く美しい。まるで煙がもうもうと上がっていくかのような熱量に富んでいた。こんなウィーンフィルを聴くのは初めてかもしれない。
こんな時期だからこそ、このような演奏が聴けたのかもしれない。私もしっかり生きていこうと思えた一生に残る演奏会だった。