トリエステ・ヴェルディ歌劇場公演『椿姫』の感想 フェスティバルホール 2019年11月9日 |   kinuzabuの日々・・・

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トリエステ・ヴェルディ歌劇場公演、ヴェルディ作曲歌劇『椿姫』の公演に行ってきた。会場はフェスティバルホール。2019年11月9日。



私にとって『椿姫』は特別なオペラ。以前、ペーター・コンヴィチュニーという演出家のワークショップがびわ湖ホールであり、『椿姫』を取り上げた。とても刺激的で、『椿姫』の内容も掘り下げることができた。だから、その頭で実演を楽しめるのは、極楽というもの。


さて、開演。前奏曲の指揮とオケは、なかなかまとまっていて、結構いけそう!

幕が上がると、背景は豪華だが幕の絵。それに机やいすなど小道具少々。ケチっているな。仕方ないか。でも、ドレスは華やか。女性はみんな白。

歌手は、ヴィオレッタのマリナ・レベカは最初はあれ?と思ったが最初だけで、あとは力強く、装飾音も素晴らしく、美しい声を存分に味わえた。歌を聴いただけで涙が浮かぶ。

アルフレードのラモン・ヴァルガスも安定。乾杯の歌は、記憶では、合唱があまり盛り上がらなかった。指揮者の指示かな?

1幕ラストの『花から花へ』は、ヴィオレッタは美しく盛り上げていった。ここにアルフレードが被るともうたまらん。でも最後に音を上げてくれなかったのは残念かな。


2幕1場は、背景が温室系に変わる。その向こうにみえるのは岩山かな。

なんといってもレベカの迫力がすごい。ヴァルガスも悪くはないが、彼女の歌が圧倒的すぎる。

そして、ジェルモン・パパ登場。アルベルト・ガザーレの第一声から極めて強い声でこの広いホールを埋め尽くす感じ。強いけど、張り詰めるというよりどこか優しい。いい声だといつも思う。

 

「プロバンスの海と陸」はもう最高。こんな歌は涙なしに聴かれない。

あまり関係ないけど、ヴィオレッタが別れる覚悟を決めてアルフレードに私を愛してねと強く歌った後、アルフレードは本を読んでいた。コンヴィチュニーのワークショップで、この場面で「ト書きに「本を読む」と書いてあるが、こんな時に本を読むのか?」と提起してたのを思い出した。ト書き通りの演出だったわけだ。


2幕2場は、1幕より少し華やかに見えたのは、女性のドレスが真っ赤だからか?

挿入の踊りや合唱は、音楽は快調だけれど、もう一つ迫力がなくて残念。人数が少なすぎるのかな。

余興のあとは、どんどん盛り上がっていく。歌手の歌の真剣みもさることながら、指揮者のあおりも効いているのだと思う。合唱のカタルシスの中でジェルモン・パパ登場。素晴らしい歌にもう涙。美しい合唱とともに大迫力で音が迫ってくる。私の好きな場面。


3幕は、部屋の中に、ベッドと、場違いに大きな1つのシャンデリア。

ヴィオレッタの迫力はものすごかった。こんな激しい歌を聴いて、もう涙、涙。涙で舞台が見えなくなって、幕となった。


盛大なブラボーが止まらない。最後はスタンディングオベーション。会場の人たちも圧倒されていたに違いない。

 


音楽的に最高の『椿姫』。1幕最後に音を上げてくれなかったのは残念だけど、それが気にならない名演だった。指揮はテンポよくオケも美しくて最高だった。音楽的には理想的な姿かもしれない。舞台はしょぼかったけどね。

なんか、舞台に金を出すより、歌手に金を出せ!という感じもしないでもないが、この音楽レベルで、先進的な演出も見てみたい気がする。贅沢か?

それにしても楽しめた公演だった。歌に涙、涙。たまりませんわ。またこういう来日公演を期待しています。