カウンターテナーが来日しない理由 |   kinuzabuの日々・・・

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昨日、フィリップ・ジャルスキとアンサンブル・アルタセルセのチケットを買った。関西ではまだ半分ぐらい残っているそうで、一ヶ月前でも結構いい席が取れた。

ジャルスキはドミニク・ヴィスと並んで、定期的に来日してくれる貴重な世界的カウンターテナーだ。先日のヴィスのリサイタルは満席だったが、会場が兵庫県立芸術文化センター小ホールで、席数も少ないし、定期的に来る客も多いし、比較するには条件が違いすぎる。

やはり、日本ではまだ古楽のオペラ、声楽があまり受け入れられてないのだろうと思う。

日本人がバロック音楽として真っ先に想起するのはJ.S.バッハだろう。しかし、彼は気楽なオペラを作曲してないし、オラトリオやカンタータにもカウンターテナーの出番は少ない。バッハの場合、バロックと言っても、同時代のそれとは異質なものだと思う。

しかし、同時代のヘンデルやヴィヴァルディのオペラではカストラートが主役であり、脇役でもある。あの時代のオペラにはカストラートが必須だし、それを再現するにはカストラートに代わるカウンターテナーの需要が高く、実際にヨーロッパのオペラ劇場で活躍するカウンターテナーは多く、それも皆レベルが高い。

それら多くのカウンターテナーが来日しない。それは、日本ではまだカウンターテナーが十分に受け入れらておらず、カウンターテナーが必須なオペラ上演がほとんどなされていないことに起因するのではないだろうか?

2006年のヴィヴァルディのオペラ《バヤゼット》の公演や、ラモーのコメディ=バレ《レ・パラダン》で、大絶賛されたバロックオペラだが、それに続くものがないような気がする。単発でやっていたり、小規模で毎年細々やっている団体もあるが、オペラ=ロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニ、モーツァルト、ワーグナー、R.シュトラウスという図式はこれからも変わることはないだろう。

だから、そこからバロックオペラに広がっていくには、オペラファンを増やすことが必要なのかもしれない。旧来のオペラに飽き足らない人たちがバロックオペラにも目を向けていくのだ。そしてそれはバロックオペラのためだけではなく、オペラ界全体のためにもなるだろう。そういう世界を私は今望んでいる。