深夜の大宮駅西口ロータリー・・・。
通称、「大宮ナンパ通り」
暴走族・やくざ・右翼・カラーギャングetc・・・。
いわゆる悪の巣窟である。
週末の深夜には、怪しい改造車のたまり場になる。
女の子の車が左に停車していて、
ナンパされるのを待っている。
失恋した翌日、19歳のトラは男友達と二人で
この大宮駅西口ロータリーにいた。
とある人間から高級車のシーマを借りて、
気持ちよくナンパを開始しようとしていた。
武闘派のラッパー「2PAC」の曲をかけながら、
シーマを快走させた。
ナンパする男なんて最低という評価もあるのかと思うが、
当時のトラとしては、それくらいしか失恋の痛手を紛らわす方法はなかった。
変な話、奥手な人間には、ナンパという出会い方の方が向いていることがある。
人間関係のしがらみが全く無い出会いというのは、
奥手な性格のトラにとって、ある意味好都合な出会いの場であった。
事実、ミキともここで出会っているのだから・・。
トラ達のシーマは、その大きなボディの割りにエンジン音をほとんど感じさせずに、
大宮ロータリーを徘徊した。
慣れた街・・・。
見慣れたナンパ車・・・。
しかし、その日は少々違った。
事件はここで起こったのだ。
トラのシーマは、
丸井のビル周辺の一方通行のロータリーに入った。
この一方通行は一度進入してしまうと、100メートル先にある出口の大通りまで右左折ができない。
つまり、出口まで他の道路に逃れる道が無いのである。
もうスグで出口だ。
そう思った瞬間、前の車(センティア)が急停車した。